冒頭、WalkMe株式会社 代表取締役社長 道下和良氏は、開催を10月に延期した経緯を説明し、参加及び登壇を予定していた顧客やパートナーに理解を求めるとともに、以下の3つに厳選したアジェンダを掲げた。
1. 日本経済新聞社でのSalesforce LEX化に伴うWalkMe導入事例の動画紹介
2. SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 福田譲氏とのビデオ対談
3. アスタリスト株式会社 代表取締役CEO 池上大介氏とのライブ対談
Salesforce ClassicからLEXへの移行で力を発揮
まず、最初のアジェンダである日本経済新聞社におけるWalkMe導入事例から見ていく。同社がSalesforce Sales Cloudを使い始めたのは2012年に遡る。その当時は、案件管理などの標準機能は一切使わず、スクラッチ開発で広告枠の在庫管理、売上管理、請求管理のシステムを運用していた。しかし、2015年にセールスフォース・ドットコムがユーザーインターフェースを刷新したことで事態が一変する。それ以降、ビジネスの生産性向上を目的に設計されたSalesforce Lightning Experience(以降、LEX)を前提に機能強化が行われるようになったのだ。標準機能のみを使っている分には、旧来のSalesforce Classicからの移行も容易だが、同社の場合はスクラッチ開発で画面を作り込んでいたこともあり、ユーザーインターフェースや機能がLEXでどう変わるかの検証が必要になった。
Salesforceのシステム管理を担当する鈴木朱音氏(株式会社日本経済新聞社 デジタル事業 メディアビジネスユニット マーケティングセンター部 次長)は、「LEXが標準になってきた2017年頃から、できるだけ標準機能を使う一体化の方向性を検討し始めた」と振り返る。さらに、検討の過程で業務の見直しも行った。デジタル広告商品の開発とオペレーションに携わる國友康弘氏(株式会社日本経済新聞社 デジタル事業 メディアビジネスユニット ユニット長補佐)は、「デジタル広告の仕様は細かく、変更や追加も多い」と説明する。そこで、広告枠の在庫状況を広告代理店のようなパートナーと共有し、営業プロセスの可視化ができれば、オペレーション効率が大きく改善できると考えた。
そのために同社が導入したのがSalesforce Community Cloudである。パートナーが管理画面から広告在庫情報を直接確認できるようにすると同時に、エンドユーザーの操作支援を行うため、日立ソリューションズからの提案を受け、WalkMeも導入した。スクラッチ開発で作り込んだ画面からLEXへの移行にあたり、鈴木氏は以前から提供してきた機能とのギャップがないか、エンドユーザーが操作性に戸惑うことがないかを心配していた。しかし、WalkMeであれば、ユーザーに合わせて説明文を出し分けるような細かいサポートも可能とわかり、その懸念は払拭された。
導入後はパートナーからの問い合わせが減るなど、移行の効果を実感している。國友氏は、「意識せずに使ってもらうのが一番いいこと。その意味ではWalkMeを導入してよかった」と評した。エンドユーザーからの評判も上々だ。鈴木氏は、「他のシステムでも同じようにしてほしい」「これが欲しかった」という意見をもらっていると明かす。
日本経済新聞社の事例のように、LEX化に伴うWalkMe導入と同様の案件の引き合いは増加中だという。道下氏は「私自身はERPやCRMを売るとき、費用のかさむカスタマイズではなく、ベストプラクティスに業務を合わせることを勧めてきたが、それが本当にいいことかと思うことも多かった」と振り返り、「WalkMeであれば、ユーザーとテクノロジーのより良い関係を紡ぐことができる。人間に寄り添う存在にしていきたい」と語った。