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共創型DX

「丸投げDX」の実態と従来型SIビジネスの限界

日本企業のDXを阻む3つの障壁(前編)


 この連載では、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を阻む要因を掘り下げ、経営者、顧客、従業員のための「共創型DX」の考え方を紹介する。第一シリーズでは「DXは生産性向上の最強の武器である」と題し、DXが生産性向上のうえでのイノベーションを生み出すことを紹介する。今回はその第一回となる。

「丸投げDX号令」の実態

 日本では、DX(デジタルトランスフォーメーション)がなかなか進展する気配を見せません。日経BP総研の上場企業など1万社を対象にした調査によると、3社に1社がDXを推進しているという結果でした。しかし、DXに取り組んでいると回答した3分の1の企業であっても、「経営層が重要性を理解しているものの、現場任せ」とする回答は41.6%あり、「重要性を理解していないし、無関心」(5.2%)と合わせると、46.8%とおよそ半数になります。

 これはDXの支援に携わってきた筆者の体感温度とおおよそ一致します。しかし、実態はこれ以上に深刻かもしれません。筆者が接しているお客様の意見が統計データのように世の中の実態をあらわしているとは言えませんが、現場の声を聞けば「DXを推進せよとの指示は来るものの実態は丸投げで何も進まない」だし、経営層の声を聞けばあべこべで「DX推進の大号令を発したものの現場が動かない」と、双方から嘆きの声しか聞こえてこないのです。なぜこのようにDXに対する無関心が大手を振ったり、推進に取り組んでいても経営層と現場の双方が動けない状態になっているのでしょうか。筆者にはDXの支援に携わる中で、このような状況を招き、日本企業のDXを阻む典型的な障壁があることが見えてきました。

従来型SIビジネス発想の限界

 システム・インテグレーション業を営んでいるお客様(A社)のご依頼は、パートナー(P社)との協業でデジタルビジネスを推進しているが、成果がほとんど出ていないので、相談に乗ってほしいということでした。そこでヒアリングをかけたところ、そのお客様のご要望は概ね、こういうことだったのです。

 顧客開拓はP社の役割で、A社はP社の要求に応えてデジタル製品を提供することが役割です。製品は既に出荷されており半年が経過していますが、ほとんど売れていません。A社の問題認識は、事業計画をしかるべき手順に沿って作成しなかったということでした。そこで事業計画をゼロベースで再構築したいということがご相談の意図だったのです。

 問題点はすぐに特定できました。A社はその製品の要求仕様をP社から受け取るのみで、製品がどのように使われるのかを調査していません。そもそも当該製品のニーズがあるのかをP社も市場調査していませんでした。その後、簡単なマーケティング・リサーチをかけるだけで、そこにはまだ市場が成立していないということがわかり、そのプロジェクトはキャンセルになりました。

 あまりにも自明な問題を取り上げていますから、なぜ市場調査をかけなかったのか、このようなことが本当に起きたのかと、読者の方々はお疑いかもしれません。しかしA社のプロジェクト・メンバーは長年、SIビジネスに携わってきた方ばかりです。SIビジネスというのは顧客から要求を受け取ることから始まるビジネスです。ですからメンバーは全員、事業企画の立案から要件定義に続くプロセスの経験がありません。ましてや、それに先立って市場調査をするといった発想がありません。いままで携わってきたビジネスで当たり前とされる発想から抜け出すことが、いかに困難なことであるかを痛感したプロジェクトでした。

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斬新な顧客経験をもたらすものは「空飛ぶ自動車」だけではない

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この記事の著者

宗 雅彦(ソウ マサヒコ)

株式会社サイクス代表
UNIXオペレーティングシステムの開発業務に従事後、オムロンの シリコンバレー・オフィスに駐在。ITベンチャーの先端リサーチ ・発掘・投資・事業開発推進業務を経験し独立。DXをIT経営の 変革と定義し、現場力のDXと未来創造のDXのふたつの観点から、 企業の現場変革と顧客創造の推進支援に取り組む。
株式会社サイクス http://www.cyx.co.jp

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