テレワークの4つのステージ いまどこにいる?
沢渡あまね(以下、沢渡):新型コロナウィルスで政府から外出自粛要請があり、テレワークに取り組む企業が増えました。しかしその障壁となったのが押印や郵送を伴う書類作業です。デジタルシフトで新たなビジネスモデルやイノベーションなど、今までにない価値を創造する流れの中で、本質的なボトルネックが浮き彫りになったと言えます。
岡本 康広(以下、岡本):これまではオリンピックを控えテレワーク環境の整備が求められていましたが、実際あまり進んでいなかったのが露呈してしまいました。政府が発出した緊急事態宣言で一時はテレワークしたものの、今は元に戻っている企業と、「もうテレワークできるようにならないとまずい」と気づいて変化しようとする企業で明暗が分かれてくると思います。
沢渡:ここから働き方格差、ひいては将来のビジネスモデル格差がうまれます。テレワークには4つのステージがあります。最初の「テレワーク 0.0」は全ての業務をオフィスで行うのが前提です。ごく一部、介護や育児あるいは本人の病気や怪我など特別な場合において、例外的に在宅勤務を認めているレベルです。
コロナ禍で大都市の企業を中心に「テレワーク 0.5」への移行が進みつつあります。自宅待機要請に沿うもので、業務改善やペーパーレス化に未着手のまま、自宅からこれまでの業務を遂行するものです。自宅に業務用パソコンを持ち込みVPNで接続する、あるいは私有端末から会社のシステムにリモートアクセスしてメールやファイルを使います。会議はオンラインミーティングの活用が進んでいます。
その先にはオフィスに依存せず業務を遂行する「テレワーク 1.0」があります。ここではリエンジニアリングやペーパーレスが進み、不要な業務をなくしています。一部、法規制により押印の伴う書類作業が残るイメージです。3.11や昨今の大型台風や水害などを契機に、事業所以外の場所でも事業継続ができるようITや職場環境への投資、業務の改善、および従業員のスキルアップに投資してきた企業は、このコロナ禍においても比較的スムーズにテレワークで業務継続できている印象です。
「テレワーク 2.0」はまさにイノベーションです。デジタルゆえのつながりを生かし、様々な地域の企業や人とつながり、新しいサービスを生み出す企業へと進化していきます。
岡本:分かれ目はどこでしょうか。
沢渡:「テレワーク 0.5」にあると考えます。ここからテレワークの課題を言語化し、改善や投資をし、テレワーク1.0に進化する企業と、「やっぱりうまくいかない」「ウチ(当社)にはやっぱりあわない」と判断してテレワーク0.0に戻ってしまう会社、あるいは実質自宅待機のような状態でテレワーク0.5で足踏みする会社。この差は大きいかと。
岡本:この差は大きいですよね。
沢渡:間違いありません。今後の業務継続性、リスク管理、優秀な人材確保など多方面で格差が生まれます。
岡本:もし「0.0」のままだと、先進的な「2.0」企業とつながることができず、コラボレーションできなくなるということですよね。
沢渡:おっしゃるとおりです。テレワーク1.0や2.0に進化した企業が、つながりたくてもつながれない。新幹線が蒸気機関車と連結できないように。
岡本:私たちはワークフローの専門家集団ですので、当然ながらワークフローを使っています。自粛要請期間のテレワークでもビジネスが止まることはありませんでした。それでも押印や郵送が必要な業務や欠点が浮き彫りになり、改善の契機になりました。小さな発見から改善するかしないか、ここから差が開くと思います。お客様からは「ワークフローで業務が止まらなかった」というありがたい感謝の声もいただいています。
沢渡:きっかけは何でも良いと思っています。ワークフローの仕組みから始めるか、あるいはオンラインのデータ共有や、プロジェクトマネジメントをするためのグループウェアから手を付けてみるか、など。変化の積み重ねが組織を「1.0」や「2.0」に進化させます。それが、イノベーションできる組織になるための礎を築きます。