コロナ禍でじわじわと進む規制強化 サイバーセキュリティにも変化
予断を許さない状況が続いている中、誰もが新型コロナウィルスの動向を注視している。健康面はさることながら、経済面での影響も気がかりだ。まだウィズコロナの渦中ではあるものの、あと何年続くのか、収束したとしたら世界はどう変わっているのか。
世界経済を考えるなら、鍵を握るのが対立を深めている米中関係だ。米国では大統領選が間近に迫り、政権交代か留任かに注目が集まっている。勝敗は今後の世界情勢を大きく左右するだろう。
西尾氏が最初のテーマとして掲げたのが安全保障経済政策(ES:Economics Statecraft)を土台としたハイブリッド戦争。ESとは経済安全保障を名目にしながら経済政策も進めていくもので、西尾氏は「米中は10年前からやっている」と指摘する。今後さらに激化していく様相を呈している。ポイントとしては「サイバーセキュリティがテクノロジーの世界だけの話ではなく、国際政治や経済戦争のフックになってきている」と西尾氏は言う。
例えば米国ならサプライチェーンの囲い込みだ。政府入札に参加する資格にサイバーセキュリティ成熟度モデル認証(CMMC:Cybersecurity Maturity Model Certification)があり、一定のサイバーセキュリティ上の配慮が求められている。もともとコロナ禍前から米国国防省向けに進められてきたところ、コロナ禍を機に全産業展開へと拡張していきそうだ。
中国は少し前まで低価格戦略で成長してきた。中国メーカー各社は圧倒的なコストパフォーマンスを強みとして製品を販売していたところ、最近では米国のようにサプライチェーンや情報の囲い込みを始めてきた。欧州ではGDPRの個人情報保護に象徴されるような情報制御戦略がある。各国それぞれ戦略に基づいた規制があるため、購買者は規制に対応した製品を選ぶようになる。そのためESは経済安全保障でありながらも経済政策の側面も持つ。
こうした情勢で、きな臭いのが製品に潜むバックドアだ。故意か過失か、5G関連などで検出され、そのたびに物議をかもしている。背景には国家支援型サイバー攻撃があるとされる。バックドアがあれば攻撃のコストは大きく下がり、有利に進められるからだ。日本に関係するところだと、過去に中国メーカーのWi-Fiルーターでバックドア(CVE-2017-3216)が確認された。十分警戒が必要だ。製造業で生産拠点を海外に置くなら、バックドアが仕込まれていないか、検閲をどこでやるのかも考慮する必要がある。