デジタルとリアルがミラーリングされて、疑似体験が実際の経験と同じ価値を持つ
福田氏:友岡さんからみて、現在のDXはどのように見えていますか? e-Businessという言葉をはじめ、過去にも同じようにデジタル化の波は起きてきたかと思います。それらとDXは何が違うのでしょうか。私自身、DXはビジネスを変革するためのものだと考えているのですが、まだはっきりと定義付けできていないのでお伺いしたいです。
友岡氏:福田さんの考えに共感です。DXやAIは言ってしまえば流行り言葉です。本質的に目指すべきところは、ビジネストランスフォーメーション。つまりビジネス変革です。福田さんのおっしゃるこれまでのデジタル化の波は、Howの部分が変化してきたといえます。たとえば情報のやりとりが電話からemailになるといったHow。だから、With ITというべきものかもしれません。既存のビジネスの仕組みにITがくっつく。一方、DXはビジネス全体がデジタルになる感じです。デジタルへの没入感が強いとでもいうべきでしょうか。
福田氏:With IT、そして没入感とは言い得て妙ですね。
友岡氏:たとえば今年の9月に富士スピードウェイで開催された「24時間耐久レース」で2位になった選手はゲーマーで、リアルのレース歴はわずか2年弱という人でした。子どもの頃からレースゲームに夢中になり、ゲームの世界大会で優勝を果たすような方だそうですが、リアルレースでも成果を出した。
本来、レーサーを目指すなら子供の頃からリアルレースで経験を積む必要があり、お金も相当かかる。それがゲームで経験したことがリアルで成果につながる。デジタルとリアルがミラーリングされ、疑似体験が実際の経験と同じ価値を持つ──。
福田氏:バーチャル側の世界から、リアルの世界に来る率が高まってきているのは確かに感じますし、それはこれまでのWith IT的なITとは異なりますね。