99%のSLAを保証、20年の実績を持つSAS Cloudとは
自社でインフラの管理が不要になるなど、様々なメリットを持つクラウド。日本でも既に約60%の企業が導入している。既に機運が高まり始めていたDXに加え、新型コロナウイルス感染症の対策としてリモートワークが進み、事業継続性の重要性が見直された。クラウドはこれらの対策支援にもなる。
SASのアナリティクスをクラウド形式で導入・利用できる「SAS Cloud」、檜皮氏によると実は20年以上前から提供しており、500社近くの顧客が導入しているという。
SAS Cloudは、SASが管理するクラウド環境上でSASのアナリティクスソフトウェアを利用できるクラウドサービスだ。インフラ環境はSASのソフトウェア向けに最適化されており、顧客は自社で管理する必要はない。
サーバー、ネットワーク、OSなどをSASの専門家が管理しており、稼働率は24時間365日99%をSLA(Service Level Agreement)として保証するという。もちろん、障害発生時のリカバリーも迅速で、優先度が高い問い合わせには最短30分で応答する。障害が発生する前に稼働に異常が出そうだといったアラートを出すなど、プロアクティブな対応も実施しているとのこと。
これらの特徴に加え、檜皮氏は管理面のメリットも強調する。オンプレミスで動かす場合は、ハードウェアやネットワークなどそれぞれのベンダーと契約しなければならない。
この場合、障害発生時にどこに問題があるのかを顧客が特定し、それぞれのベンダーとやりとりをすることになる。一方、SAS Cloudなら一元的にSASと契約する。管理はSASがすべて行うため、複数ベンダーによる煩雑な管理から解放される。
SAS Cloudの2つの選択肢、3つのサービスメニュー
まさにDX、ニューノーマル時代に対応できるSAS Cloud、SASは「Hosted Managed Services (ホステッドマネージドサービス)」と「Remote Managed Services(リモートマネージドサービス)」の2つの選択肢を用意している。
Hosted Managed Services
Hosted Managed Servicesはインフラ環境、インフラ環境の保守・運用を含めてSASが一括で行うサービスだ。SAS以外で既に使用している他のクラウド環境、オンプレミスにあるデータウェアハウス環境などとの連携もできる。
「SAS管理のリソースやスキルがない、IT部門の負荷を軽減したい、実証済みのシステムが欲しいといったお客様に最適です」と檜皮氏。ハードウェアの専門家、ソフトウェアの専門家など、各分野のエキスパートで構成された専門チームが対応し、99%の稼働率保証がつくサービスだ。
Remote Managed Services
Remote Managed Servicesは、顧客がインフラ環境を準備するという点が大きく異なる。既に契約済みのクラウド環境や投資した既存のデータセンターを使い続けたいが、SASアプリケーションの管理はSASに一括で任せたいなどのニーズを満たすものとなる。クラウドの準備ができていないがすぐに現状の課題を解決したいといったケースでも、有効な選択肢だという。
SASのアップデートや保守・管理はSASの専門家が行い、SAS稼動についても24時間365日体制でモニタリングする。SASの稼動に異常が発生しそうな予兆があれば事前にアラートするなど、事業運営への悪影響を最小限に抑制する。インフラは顧客側の準備となるが、「お客様が契約しているIaaSプロバイダーや社内のIT部門と連携して対応する」という。
Hosted Managed ServicesとRemote Managed Servicesは「Managed Application Services」に分類されるが、SAS Cloudソリューションにはこの他にも「Software as a Service」と「Consulting Service」があり、合計3種類のラインナップとなる。
Software as a Serviceは、日本でも実績のあるSASのデジタルマーケティングソリューション「CI 360」、SASやPython、Rなどを用いて予測モデルを作成する環境をサービスとして提供する「SAS Machine Learning」がある。
Consulting Servicesは名称の通りコンサルティングサービスだ。ここでは、顧客のビジネスに関連するデータをSASが預かり、SASの分析者やデータサイエンティストが分析を行ない、得られた結果をアウトプットとして提供する「SAS Results」と「Advisory Services」を用意する。SAS ResultsはResults as a Service(リザルト・アズ・ア・サービス;RaaS)とも言われているという。
SASのアナリティクスを使いたい場合、Managed Application Services(Hosted)、Managed Application Services(Remote)、Software as a Service、SAS Resultsから選択することになるが、それぞれニーズや目的により最適なソリューションを選ぶことになる。
たとえば、「ハードウェア、ソフトウェアは不要で分析結果だけが欲しい」となるとSAS Results、「データをオンプレミスや自社が管理するクラウド上に保管したい」場合はManaged Application Services(Remote)が最適、と檜皮氏は説明した。
オンプレミス環境からSAS Cloudへ、2ステップで移行
最後に檜皮氏は既存のSAS環境からSAS Cloudに移行するにあたって、想定される流れについても触れた。
オンプレミス環境で利用している場合、複数の契約窓口があり、それぞれSLAも異なる。この状態からステップ1として、既存環境の中身を変えることなく、SAS Cloudに移行、エンドユーザーは同じインターフェイスなので「比較的抵抗が少ない」一方で、複数の契約が単一となりSLAも1つとなる。
そして、ステップ2としてクラウドネイティブなアーキテクチャに移行する。これにより、クラウドのメリットを享受できる分析環境へと最適化し、クラウドネイティブなアーキテクチャを持つSASのAIプラットフォーム「SAS Viya」を適用することで、AIの活用まで広げることができる。
このようなSAS Cloudへの移行を支援するべく、SASは「イニシャルアセスメント」として既存のSAS環境の把握、概算費用の見積もりを行う約2週間のプログラムを用意している。
クラウドへの移行を検討中の顧客に朗報となるのが、SASが2020年6月に締結したMicrosoftと戦略的提携だ。これにより、MicrosoftのIaaS「Microsoft Azure」など、「2社の技術を利用した、最高のアナリティクス環境の提供が可能になりました」と檜皮氏。
既にSAS環境をAzure上でSAS向けに最適化された環境に移行することで、SASの処理時間を50%短縮した企業、ハードウェア、設備などの総所有コスト(TCO)を83%削減した企業などの事例も出てきているという。