2020年SaaSはバックオフィスが上昇、マーケ&セールスが減少
前半はスマートキャンプの阿部慎平氏(取締役COO)が、「SaaS業界レポート2020」のハイライトを紹介した。2019年11月にマネーフォワードのグループ会社になったスマートキャンプは、法人向けSaaSの比較、検討サイト「BOXIL SaaS」を運営している。SaaSに関心のあるユーザーの資料請求動向からレポートを作成するようになり、2017年6月に出した最初のレポートから数えて今回で4回目になるという。
SaaSの需要動向を見るため、BOXIL SaaSの資料請求動向を分析したところ、「コラボレーション」と「バックオフィス」分野の製品への資料請求がそれぞれ11.7%、24.4%増加し、「マーケティング&セールス」と「HR」分野の請求が減少したとわかった。特にコロナ禍でリモートワーク環境を整備する需要が高まったことから、「Web/テレビ会議システム」「電子契約サービス」の2つの分野での資料請求が急増している。
ここまではユーザー動向であるが、日本でも増えてきたSaaSスタートアップのビジネスはどうなっているか。阿部氏が重視するトレンドとして挙げたのは、以下の3つであった。
- 資金調達規模・時価総額の大型化
- バーティカルSaaSを含む領域の多様化
- 事業シナジーを目的としたM&Aの増加
INITIAL(旧ジャパンベンチャーリサーチ)の調べによれば、国内SaaSスタートアップのうち、2019年に資金調達を行った企業は155社、調達金額は744億円となった。1社あたりの調達金額は2018年比で3億円から4.8億円に増加した。2020年の動向が気になるところだが、阿部氏の肌感覚では調達市場環境が悪化した兆候はないようだ。建設施工管理SaaSを提供するアンドパッドは、2020年7月に40億円、10月には追加で20億円の調達に成功している。また、調剤薬局向けSaaSを提供するカケハシも2020年10月に18億円の調達に成功している。この2社は特定の業種のビジネスプロセスに特化したバーティカルSaaSである点が共通する。さらに、国内SaaSのIPO動向を見ると、上場時から時価総額を大きく増やす傾向が見られ、株式市場でもSaaSビジネスの成長性が評価されているとわかる。この高い企業価値評価を活かし、M&Aでさらなる成長を目指す企業が増えていくとスマートキャンプでは見ている。
- 『SaaS業界レポート2020』のダウンロード ※1『BOXIL SaaS』への会員登録が必要(無料)