
フィッシング攻撃は拡大の一途をたどっている。現在、そのほとんどはメールを介しており、日本語の精度も向上しつつある。日本の企業やサービスを騙るケースも増えており、もはや日本語はサイバー攻撃の障壁になっていない。今回は、2020年のフィッシング攻撃の状況を振り返る。
2020年はフィッシング詐欺の報告件数が急増
フィッシング詐欺とは、実在の企業やサービスを装って偽のログイン画面などに誘導し、IDとパスワードといったログイン情報を盗み出そうとするサイバー攻撃のことである。最近はメールが主な攻撃手法となっている。フィッシングはユーザーを“釣る”ことから、釣り(Fishing)をもじった言葉とされており、誘導先の偽サイトはフィッシングサイトと呼ばれる。
フィッシング詐欺はユーザーの心理を悪用するため、マルウェアなどシステム的な仕組みを一切必要としない。もちろん、フィッシングサイトを作成する必要はあるが、現在ではサイバー犯罪者向けのアンダーグラウンド市場でフィッシング用のキットやサービスが存在している。これらを利用することで、正規のサイトにそっくりなフィッシングサイトを作成できる。
サイバー犯罪者は、ユーザーを不安にさせリンクをクリックさせるために、様々な工夫をしている。有名な手法には、宅配便の不在配達通知がある。「配達にうかがったが不在だったため荷物を持ち帰った」として、再配達のリンクをクリックさせようとする。ショッピングサイトを騙り“購入確認”の通知を送る手法もある。購入した覚えのないユーザーは、思わず“キャンセルはこちら”のリンクをクリックしてしまう。
この他にも、「新たなセキュリティ対策を導入したので、ログインしてアカウントをアップデートしてください」「不正なアクセスを検知したので、ログインして確認してください」「アカウントを更新できませんでした。このままではアカウントが停止になります」などのメールも、フィッシング詐欺の常套手段として多く確認されている。
こうしたフィッシング詐欺は年々増加しているが、特に2020年は急増した。フィッシング対策協議会のレポートによると、同協議会への報告件数が1月は6,653件だったのが、5月には14,245件と倍以上になり、12月には32,171件と1月の5倍近くに増加している。このデータは、フィッシング詐欺が人を騙すシンプルな攻撃であることと、偽サイトの作成が容易になったことで、サイバー犯罪者がその費用対効果の高さに気づいたことを表している。

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伊藤 利昭(イトウ トシアキ)
Vade Japan株式会社 カントリーマネージャー2020年1月に就任。責任者として、日本国内におけるVadeのビジネスを推進する。これまで実績を重ねてきたサービスプロバイダー向けのメールフィルタリング事業の継続的な成長と新たに企業向けのメールセキュリティを展開するに当たり、日本国内のパートナーネ...
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