DXプロジェクトの中で見えてきた問題
オムニチャネル、OMO、ECを基軸とした攻めのDXなどを積極的に展開してきたエスキュービズムでは、機能、仕組みとしてのシステムという視点からだけではなく、今後DXという文脈で語られる場合の「公共的な性質を持つシステム」に着目して推進を行っています。本記事では、どのようにDXのプロジェクトを推進していくべきであるのか、それらを実務レベルで考えたときに必要な要素などをご紹介します。本記事の内容が、今後実施される様々なプロジェクトの進行にお役立ていただければ幸いです。
皆さんも昨年来感じておられると思いますが、コロナ禍のために、DXへの取り組みは急速に早まっています。アメリカでは米国国勢調査局の発表している通り、およそ5年間分のシステム化に関わる投資が加速し、暗号化資産の急騰など、在来には予想できなかったレベルでのデジタルシフトが急速に進んでいます。ヨーロッパでも同様であり、今までEC化率が低いと言われていたイタリアなど、ICT後進が顕著であると言われている国々でも大きく状態は変化しています。
世界は例を見ないほどのスピードで、特にITとビジネス、生活という領域ではダイナミックな変化が訪れました。しかし、ダイナミックな変化が要求される一方で、その変化を提供し続けるための仕組み作りの現場においては、様々な課題があることも明らかになりつつあります。
数多くある課題のうちの一つは、急激なDX推進による弊害として発生している、IT人材の少なさです。プログラマ、システムエンジニアなどあらゆる職種で人員は不足していますが、フォーカスされやすい「作り手側」だけにはとどまっていないことは皆様ご存じの通りではないかと思います。技術職の不足よりも顕著であり、そして課題になるのは、「発注側」いわば、企画側の人員の不足です。この結果、複数のプロジェクトで、発注元の会社は変わっているのに、顧客側担当者はいつも一緒(転職している)というようなことが発生します。実は、私もすでに5件は経験しています。担当者が同じであり、良好な関係が築けていればコミュニケーションコストも大幅に削減することができます。コスト削減がもたらす効果から見ればこの状況は望ましいといえますが、発注側の転職に依存する状況を前提としたプロジェクト計画を立てるわけにも当然いきません。
このため、受託者側ではディスコミュニケーションがある程度生じることを前提としたプロジェクト計画やスケジュールを立てていく必要があるということです。必要以上に安全係数をとったように思えるスケジュール、過剰に積まれたバッファなどには、このような背景が当然あります。
これ自体はPMの今までのプロジェクトの運営のノウハウやPMOのプロセス管理などに基づいて定義されていくことになりますが、このディスコミュニケーションのリスクのとり方そのものが、今後DXプロジェクトの進行において、受託側、発注側双方に負担を強いるそもそもの原因なのではないか、と弊社では思うに至っています。