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なぜ資生堂は、アクセンチュアとIT/デジタル専門の合弁会社設立に舵をきったのか?高野代表に訊く

  2021/07/01 09:00

 資生堂とアクセンチュアは2021年5月11日に記者会見を開き、資生堂グループの会社として、両社の合弁会社「資生堂インタラクティブビューティー株式会社」を本年7月に設立することを発表した。デジタルマーケティング業務やIT/デジタル関連業務を提供する新会社の代表となるのは資生堂の執行役員CITO(Chief Information Technology Officer)である高野篤典氏。小社統括編集長の押久保剛が高野氏に対しインタビューを行い、新会社設立の狙いや今後の展望について聞いた。

革新的なビューティー体験を共創できるベストパートナー

押久保剛(以下、押久保):資生堂がアクセンチュアと新会社、資生堂インタラクティブビューティーを設立した目的お聞かせください。

高野篤典氏(以下、高野氏):アクセンチュアと資生堂はいろいろな領域で以前から一緒に取り組みをさせていただいています。たとえばデジタルの領域では、2016年にニューヨークで「センター・オブ・エクセレンス」というデジタルの専門部隊を作って、全世界のデジタル活動を進めてきました。

2020年11月に取材した際の高野篤典氏。当時から資生堂のDXに対する意気込みを語っていた(撮影:丸毛透
2020年11月に取材した際の高野氏
当時から資生堂のDXに対する意気込みを語っていた(撮影:丸毛透)

 EC強化や、社員のデジタルのリテラシーを高めるための企画を進めていたのです。その中で、全世界のお客様情報を利活用していくための施策を、アクセンチュアをパートナーに選定していたのです。私が担当するIT領域では、2019年の後半からグローバルでの基幹システムを標準化していくためのパートナーにアクセンチュアを選ばせていただきました。

 2020年からは新型コロナウイルスの影響もあり、日本のビジネスモデルを変えていくにあたり、デジタルをコアにしたマーケティングを進める際に、戦略の策定においてアクセンチュアに入っていただいたのです。

 昨年は資生堂にとって「VISION 2020」という、6年をかけた中期経営戦略の最終年だったのですが、新型コロナウイルスによってドラスティックな事業影響が出ました。それを踏まえ、今後の100年を見据え、安定して輝き続ける会社であるために、新しい中期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」の中で、デジタル強化のニーズが高まりました。そして今回、成果を早く出すには合弁会社を作るほうがいいのではないかという結論に達したのです。

押久保:突然の話ではなく、何年も会話を重ねた上で、合弁会社という形になったということですね。

高野氏:はい。デジタルに関してはここ1年ぐらい前から、ITに関しては2年ぐらい前から議論をし、他のパートナー企業ともいろいろとお話をしました。そのような下地があった上、最終的に昨年度の事業の状況を見据えながら、今回の合弁会社設立という判断に至ったのです。

押久保:今回、高野さんは新会社の代表というお立場になりました。これでは資生堂のCITOとして高野さんはITを牽引されていたお立場だったと思います。今回、合弁会社という形をとったことで、これまでのCITOとしての積み重ねてきたことに加えて、具体的にどのような効果が期待できるのか、教えてください。

高野氏:ご存知のとおり、事業会社によってはIT部門とデジタルの部門の仲が悪い、ということはよくあります。いろいろな事情でなかなか一緒に動きにくい、という話は私もよく耳にします。しかし、資生堂ジャパンでは、昨年の4月にCDOとしてスギモトが入社し、私と密にやりとりをしています。

 今回、資生堂ジャパンの中にあった、スギモトが率いるデジタル領域のチームに加え、資生堂本体と資生堂ジャパンにあったITのチーム、それらをこの合弁会社に全部集めようとしています。IT/デジタルを一つに束ねることで、これまで以上のシナジー効果を創出できると考えております。

 もうひとつは、IT/デジタル領域において専門性のある、尖った人材の採用に効果が出てくると考えています。ユニークなスキルをもった人材を惹きつけるには、柔軟な人事・評価制度が必要になります。そういった改革は、本体から切り離したほうがやりやすいのです。アクセンチュアとの合弁ということでも、IT/デジタル人材を惹きつけやすいと考えています。

押久保:資生堂本体のほうでも、ダイバーシティ化を進めている印象はあります。しかし、よりITやデジタルに特化したユニークな人材を獲得するには合弁会社のほうが良いと判断をされたのですね。

高野氏:今の時代、内製力を高めていかないと厳しいです。特にデジタル領域の事業ニーズに即座に答えるのは難しくなってきている、という背景もあります。緊密に連携しているパートナー企業も多数いますが、どうしても受発注があって、要件確認をして、というステップが増えます。グループ内にITスキル、デジタルスキルが高まることによって、より早い対応が可能になりますので、内製比率を高めたいというのも今回の狙いの一つです。

押久保:内製比率を上げたいという点に加えて、アクセンチュアには、クリエイティブやマーケティング領域のグループ会社アクセンチュアインタラクティブもありますし、デジタルマーケティングの領域においてもアクセンチュア社の存在感は高まっています。ITプラスアルファという意味でも期待できますね。

高野氏:One to Oneと申しますか、テーラーメイド的にお客様のニーズに応える提案を行う上で、マーケティングの領域も非常に重要になります。その点、アクセンチュア社は内製力を含めてリソース、経験をかなり持っている企業と言えます。

 そして、先日の記者会見では資生堂CEOの魚谷雅彦に加え、アクセンチュア社CEOのジュリー・スウィート氏も参加いただきましたが、2人ともダイバーシティ&インクルージョンを重要視していて、会社が目指すカルチャーやビジョンが近いことも大きいですね。

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著者プロフィール

  • 森 英信(モリ ヒデノブ)

    スマホアプリやWebサイト、出版物といったコンテンツの企画制作を手がける株式会社アンジーの代表。写真加工アプリ「MyHeartCamera」「PicoSweet」など、提供するアプリは1100万以上のインストールを獲得。2019年にはAR(拡張現実)プログラムに関する特許を取得。自身はITやHRなどの取材記事ライター・編集者としても活動。趣味は英語学習(TOEIC L&Rスコア845)。

  • 押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

    メディア部門 メディア編集部 部長/統括編集長 兼 EnterpriseZine編集長 1978年生まれ。立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、『MarkeZine(マーケジン)』の立ち上げに参画。2006年5月のサイトオープン以降、MarkeZineの企画・運営を一貫して担当。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長となり、2015年4月からは第2メディア編集部 部長/MarkeZine編集長/マーケティング広報課課長を兼任。2019年4月よりメディア部門 メディア編集部 部長/統括編集長に就任。9月よりEnterpriseZine編集長も兼任。各メディア編集長と連携し、翔泳社が運営する全メディアの価値向上を図っている。

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