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イノベーションには「輝かしい失敗」が必要:紺野登/野中郁次郎/ポール・イスケ 第15回 トポス会議:紺野登氏、野中郁次郎氏、ポール・イスケ氏

  2021/06/29 08:00

 第15回のトポス会議が5月20日、オンラインで実施された。今回は「創造的失敗思考 複眼であたらしい世界を築く」と題して、コロナ後の世界を構想する視座を「失敗」の意味を通じて考察が語られた。FCAJ代表理事である紺野登氏のオープニング、野中郁次郎名誉教授からのメッセージ「失敗の本質から知識創造へ」、ポール・イスケ氏の講演「輝かしい失敗」の内容を紹介する。

失敗は新しい価値の源泉:紺野登氏

紺野登 FCAJ代表理事 トポス会議発起人/野中郁次郎 一橋大学名誉教授 トポス会議発起人/ポール・ルイ・イスケ マーストリヒト大学ビジネス・経済学部教授
紺野登 FCAJ代表理事 トポス会議発起人/野中郁次郎 一橋大学名誉教授 トポス会議発起人/ポール・ルイ・イスケ マーストリヒト大学ビジネス・経済学部教授

 本日のトポス会議の背景について説明します。少し大きな話ですが人類は歴史的に、パンデミックの後に必ず新たな文化や社会経済を生み出してきました。例えばイタリアのペストの後に起こったルネッサンスがそうだと言われます。今この混乱した時期に私たちに求められるのは、未来の次なるバージョンの世界を構想することではないでしょうか。前提として以前と同じ世界は戻ってこないと思います。ですから過去にうまくいった成功やそのやり方を分析して、もう一度繰り返そうとしてもうまくいかないのではないかと思います。

 成功するストーリーだけを頭に描いて行動すれば、現代の複雑な世界では失敗の連続となるかもしれません。むしろ知るべきは失敗のパターンではないかと思います。今イノベーションには失敗がつきものだということで、誰もが失敗について話していますがなかなか挑戦しようとはならないようです。失敗についての見解の多くは情念的、感傷的で、結局失敗を恐れるなとか我慢して頑張るとかいう話になりがちです。そこで失敗をネガティブに捉えるのではなく、私たちと世界との相互作用、必然的な現象として捉えて、そこから学び、新たな価値を見出そうとすることは「創造的失敗思考」と呼んで、今日のトポス会議のトピックとしました。

失敗の本質から知識創造へ:野中郁次郎氏

野中郁次郎 一橋大学名誉教授 トポス会議発起人
野中郁次郎 一橋大学名誉教授 トポス会議発起人

 今の日本社会や日本企業の停滞は歴史的に見て、大変重いと思います。しかし、実はこれは日本だけの問題ではありません。従来の資本主義の限界についての議論が数年前から盛んになって、株主資本主義が否定され、ステークホルダー資本主義が叫ばれています。新型コロナウイルスへの対応は世界的な問題でもあり、日本の問題は世界の問題でもあります。では私たちはこのような変化のただ中で、次に何を生み出し、実践していけばよいのでしょうか。

 私の著書『失敗の本質』では、過去の成功体験への過剰適応という失敗の組織的要因を指摘しました。これには二つの意味合いがあります。

 第一は、日本では失敗を顧みず蓋をしてしまう、そういう文化が根強い。第二に、失敗よりも過去の成功ストーリーにのみ目を向けてしまうという問題です。そのために創造への転換ができず、環境変化に適応できないのです。

 しかし得てして失敗の話は暗くなる。エラーを潰すために PDCAを回そうという話になりがちです。なぜならここでの失敗は“工業社会の失敗”の捉え方であって、確率的に発生するエラーを意味するからです。

 一方、知識社会経済となった今、イノベーションすなわち不断の知識創造が求められ、そこには試行錯誤や紆余曲折、葛藤や軋轢などによる予測不能な失敗がつきものなのです。その知識創造の過程では何かやれば何かが生ずるのは必然で、失敗も含めた実践と反省の積み重ねから飛躍する発想が生まれるのです。ですから最初にすべてを精緻に計画してから実行する、ウォーターフォール型のプロセスやPDCAでは対応できません。機動的に状況変化に対応しながら、自己変革するレジリエントなアジャイル型プロセスが求められるわけです。

 それは理想と現実、変化と安定、デジタルとアナログなどの相反するものをあれかこれかの二項対立(ダイコトミー)でとらえることではありません。求められるのはあれもこれもの二項動態(ダイナミックデュアリティ)思考で、総合していくプロセスなのです。それはみんなで真剣な対話を通じて、共通の最適解を導く出せる可能性を持っています。

 今回のトポス会議では、「創造的失敗思考」をテーマに揚げました。予測不能な危機に直面している今だからこそ、失敗を意味ある現象、新たな価値創造の機会として捉え、知識創造に展開する「賢慮」、あるいは実践知のリーダーシップの発揮が一人ひとりに求められているのではないでしょうか。

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