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心理学をビジネスで使うための5つの考え方

 ソフトウェアにはなぜ、Enterprise EditionとStandard Editionがあるのでしょうか? RFPにはなぜ競合製品比較を求めるのでしょうか? これらは心理学から説明でき、いくつかのキーワードを知ることでテクニックが学べるのです。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、現在はクラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長の北川裕康氏が本音と洞察で業界動向を掘る連載。

 東京五輪開催中の新型コロナウイルスの若者による感染の蔓延は、なぜ起きているのでしょうか。今回、心理学から少し考えてみたいと思います。これは、「相対的な比較」の心理で起きていると思います。本来、東京五輪と、移動や旅行は、関係ない判断基準ですが、東京五輪が、移動や旅行の判断での比較対象になってしまい、相対的に「移動や旅行は良い」という判断が起きてしまっているのではないでしょうか?

 ヒトの心理は面倒ですが、面白いものです。人間は論理的な生き物のようで実はそうでなく、経験と勘に従っている部分が多くあります。私は、マーケティングを担当してきたこともあり、心理学、特に群集状況のもとで醸成される群集に特有な「集団心理学」や、個人に対する社会活動や相互的影響関係を科学的に研究する「社会心理学」に興味があり、それなりに勉強してきました。私はまだ会ったことがないですが、欧米の企業では社会心理学の学位をもつ方が社員として働いていることもあると聞きます。それほど、実はビジネスの世界に有効なのです。理解していると人間関係にも有効だと思います。ちなみに、私はヒトを操ろうと思って勉強しているわけではありません。心理学が好きで勉強していると、大概の方は警戒心を持ちます(苦笑)。 私はそこまで達人ではないです。ご安心ください。

 今回は、心理学の中から、代表的な理解すると役に立ちそうな心理を5つ紹介します。

相対的な比較

 冒頭で述べたように、ヒトは絶対的な基準で物事が判断できないと言われています。何かを比較の基準にして、判断するのです。それは、「新型コロナウイルスと五輪」のように、同じ軸にないモノやことでもです。相対的な比較の例をあげます。レストランで、とても高級なメニューが1つ設定されています。でも、それは囮であり、その下のそれなりの価格のものを売ろうとする作戦で用いられます。あれだけの価格の最高級品があるのだから、次のリーズナブルな価格であっても、きっと高級でうまいに決まっていると人は判断しがちです。よくソフトウェアで、Enterprise EditionとStandard Editionがあるのも、相対的な比較を容易して、高いものを買ってもらう、または、安いものを安心して買ってもらうためにあるのだと思います。

 相対的な比較は、製品やブランドの差別化をするような場合とても重要で、競合をしっかり見定めて、他社とは違うところで価値訴求する必要があります。また、よくRFP(提案依頼書)で詳細な機能比較をするのも、この一種かもしれません。そうしないと、判断できないのです。机上の比較は意味がないケースもあり、しっかり優先事項をもち、その上での比較が必要だと考えます。

アンカリング効果

 カルガモの赤ちゃんが、最初に目にしたものを親と思うように、ヒトも最初に見た数字や条件が、その後の考えに影響を及ぼすという効果です。船の筏=アンカーが降りてしまっているような心理からこの名前が来ています。刷り込み効果です。ここで言えるのは、何事にも、第一印象はとても大切だということです。IT業界の営業でありがちなのが、最初の見込み顧客との会議で、製品の詳細を説明することがあります。そうすると見込み顧客は、この営業は単なる製品売りで、問題解決するようなソリューションを提示してくれないし、ましてや信頼できるパートナーには程遠いと判断され、その後もその認知は変えられません。しっかり勉強をして、最初に「こいつビジネスが分かっているな。もう少し話しを聞いてみよう」と思わせないと、よい営業はできないということです。プレゼンの最初の入りも気をつけたいですね。価格の値上げも注意が必要です。前の価格がアンカーになっていますので、付加価値をつけてアンカーを再定義しない限り、「値上げしやがって」という話しになります。

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コミットメントと一貫性

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この記事の著者

北川裕康(キタガワヒロヤス)

35年以上にわたり B2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Inforなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションなどで執行役員などの要職を歴任。現職は、クラウドERPベンダーのIFSでマーケティングディレクター。...

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