前回までのおさらい
FinOpsは、「経営層」「ファイナンス」「エンジニア」「ビジネス部門」などのステークホルダーが協力し、ユニットエコノミクスを改善。これにより、「収益の増加」「顧客基盤の拡大」「製品や機能のリリーススピードの向上」といったビジネス価値を向上させるためのものです。
そして、FinOpsを進める上での大切なポイントとして、下記3つを挙げることができます。
- FinOpsチームを組成して組織横断でコラボレーションする
- 組織横断での活動にあたり共通言語化する
- ユニットエコノミクスを意思決定に活用する
前回は、このうち1にフォーカスしながら「FinOpsチームが何故必要か」「FinOpsチームは何をすべきか」「FinOpsはどのように推進していくべきか」について紹介しました。今回は、残りの部分である「共通言語化する目的」や「ユニットエコノミクスの重要性」について紹介します。
各ステークホルダーとFinOpsチームが協業するために重要なこと
前回も説明した通り「経営層」「ファイナンス」「エンジニア」「ビジネス部門」などの各ステークホルダーは、異なる目標や意識をもっているだけでなく役割も異なるため、日頃利用している言語は各々異なります。
たとえば、クラウドについて説明をするとき、ファイナンスチームは「使用量」「レート」「コスト」などの言語を用いますが、エンジニアチームは「利用率」「可用性」「信頼性」などの言語を使って説明することが多いのではないでしょうか。どちらも説明としては正しいのですが、お互いがコミュニケーションをとる上では問題が生じてしまいます。また、クラウドプロバイダーによって使用されている用語も異なるため、複数のクラウドプロバイダーを利用している企業であれば問題はさらに複雑化します。
この問題を解消するためには、全員が理解出来るように“共通の定義をもつ言語”を使用する必要があります。その際、可能であれば新しい言語を作るのではなく、「あるチームで既に利用されている言語」を共通言語とする、あるいは「FinOpsの世界で一般的に使われている共通言語」を利用することがお薦めです。
このように共通言語を作成することにより、クラウド特有のテクノロジー用語というものを抽象化し、ビジネス用語に置き換える。これにより、各ステークホルダーが正確な共通理解をもつことができたり、企業幹部向けの報告に使用できる適切なレポートを作成することが可能になったりします。
また、共通言語化することの利点は他にもあります。たとえば、各チームが消費したコストと最適化状況について共通言語で作成されたレポートを使用することで、チーム間のベンチマーク比較ができるようになります。これが社内間での競争意識を高めることにつながり、より良い数値を出すために努力してくれるようになるかもしれません。さらに、コストの最適化が顕著なチームを表彰したり、最適化ができていないチームには、ベストプラクティスなどの情報提供やサポートを行ったりすることで最適化を促進することができます。
なお、社内のベンチマーク比較だけでは限界がありますので、他企業とのベンチマーク比較を行うことで、自社の中でどこに改善領域があるのかを把握出来るため、より一層の全社最適化につなげることも可能です。このとき、ベンチマーク比較する他企業については、クラウド利用額が自社と同程度の企業が望ましいでしょう。というのも、クラウドコストに年間10億円を消費している企業と年間1,000万を消費している企業では、そもそもレートなどが異なる可能性が高く、適切な比較にならないためです。