増え続ける社内のSaaSを一元管理
――最初に「マネーフォワード IT管理クラウド」について、製品の紹介からお願いします。
これまで、マネーフォワードは個人向けの家計簿アプリや、企業のバックオフィス向けクラウドサービス等を提供してきました。「マネーフォワード IT管理クラウド(以降、IT管理クラウド)」はIT部門向けのSaaSという新しい分野への挑戦ですが、実はコアテクノロジーの1つであるアカウントアグリゲーション基盤を活用して開発した製品です(図1)
マネーフォワードが個人のお客様に提供している家計管理ツール「マネーフォワード ME」では、銀行口座やクレジットカードのデータを集約するためにアカウントアグリゲーション基盤を使っています。同じように、IT管理クラウドでも企業が利用中のSaaSのアカウントデータを集約し、ライフサイクルマネジメントに役立ててもらうことを考えていて、イメージとしては「SaaSの家計簿」を思い浮かべていただくとわかりやすいと思います。利用料金の集計に関してはこれからになりますが、企業内で増え続けるSaaSを一元的に管理する製品として、2021年8月からベータ版の提供を開始しました。
――どんなビジネス課題の解決を狙った製品でしょうか。開発の経緯を教えてください。
マネーフォワードのグループ会社の1つ、スマートキャンプが日本のSaaSのマクロトレンドをまとめたレポートを出しています。この8月に発表した「SaaS業界レポート2021 速報版」によれば、国内で利用可能なSaaSは800を超えていることがわかっています。そして実際に社内で利用されるSaaSの数も年々増えており、統計データは持ち合わせていませんが、我々のお客様でも1社で100種類以上のSaaSを使っているところも珍しくなく、肌感覚では20〜30種類のSaaSを使っている企業がほとんどではないかとみています。
IT管理クラウドが焦点を当てているのは、SaaSのライフサイクルマネジメントにおける購入後のプロセスです。契約を更新する場合もあれば、積極的に使わずに途中で契約を停止する場合、あるいは解約に至る場合もある。どのぐらいの数のアカウントを契約しているか、SaaSの種類と利用ユーザーが増えるほど管理が複雑になります。マネーフォワード社内でも人事、法務、財務などの業務アプリケーションの他、コラボレーションツールを含めて200以上のSaaSを使っているのですが、ここまで多いと全体像の把握が難しくなるんですね(図2)。