10年前に一人から始まった「CCoE」
宮原一成氏(以下、宮原氏):御社では、CCoEに関連した活動を早くからなさっていたと伺います。いつくらいからどのような形でスタートされたのか、お聞かせいただけますか。
森谷優貴氏(以下、森谷氏):クラウド利用そのものは、R&D部門で2009年に始まったのですが、本番運用にあたって、統制面やリテラシー面、たとえば個人アカウントでも本番運用ができるなどの不安があっただけでなく、コスト面でクラウドの利用状況を見える化して把握することも必要でした。しかし、R&D部門はクラウド利用ルールを決めて強制的に管理する立場ではなかったので、最初はガイドラインやセキュリティチェックツールなどを作っていき、その後社外にもノウハウを共有するようになりました。最初は一人でやっていたのですが、2013〜2014年くらいに「それがCCoEっていうんですよ」と言われて、後からそういう表現をするようになったという次第です。今は、社内外のメンバーを含めて10人くらいのチームになっています。
現在は、具体的なミッションとして大きく3つを担っています。まず1つめは「コスト最適化」、2つめに「技術的な支援」であるアーキテクチャの設計やガイドラインの整備、ノウハウ共有など。もう1つは、「意見を取りまとめる」という役割であり、これによってクラウドプロバイダーに対して、欲しい機能などの要望をどんどん提案する窓口も担っています。
宮原氏:FinOpsでは、利用量やサイズなどから考える「利用量の最適化」と、1時間や1GBあたりの利用料を考える「単価の最適化」の2軸でアプローチすることが基本になっています。この「単価の最適化」には、会社全体の利用量や利用計画を元に “規模の経済”で考えることが重要になりますが、CCoEとしてもそうしたミッションをもっているのですね。
森谷氏:そうですね。“規模”については、要望の取りまとめを2012年くらいから始めて、アカウントの集約みたいなことも行っています。また、ユーザーが増えれば単価は下がるので、2014年くらいから社内向けに共通で利用できるプラットフォームを構築・提供して、共通基盤という名前で運用保守も行っています。TrendMicro社「DeepSecurity」の管理サーバー部分を共通基盤として提供し始めたのが最初で、今は十数個の共通基盤を扱うようになりました。
宮原氏:それはすごいですね。「技術支援」についてはいかがでしょうか。設立からどんどん役割や期待値も大きくなっているように感じますが。
森谷氏:技術支援は本当に幅が広くて、社内向けの勉強会やハンズオンなどをまとめるだけでなくて、ボトムアップとして行うべき部分を含めて、戦略的に考えながら実行しています。業務的には、ツールの提供が半分以上になってきましたね。「Slack」や「Backlog」なども取りまとめて提供し、社内で開発したコスト管理ツール「CostVisualizer」、クラウドのアセスメントツール「ScanMonster」なども提供しています。
さらに、トレーニングや事例の共有なども積極的に行っています。クラウド事業者はノウハウを具体的に紹介した資料をいろいろ出していますが、自分たちの実体験としてはなかなか腹落ちしにくいんです。そこで、社内事例の共有会などを定期的に開催し、アーキテクチャやセキュリティのコンサルティングやドキュメント提供なども行っています。あとは、問い合わせも専用の窓口で履歴管理をしながら受けています。以前はメールベースだったのですが、追いつかなくなることを見越して、現在は少人数でも対応できるようにシステム化しています。