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情シスを悩ますジレンマは「廉価版ビジネス」で解決を目指せ 現実的なDXのヒントは“ahamo”にあり

第3回:2部署間のジレンマを脱するための解決法

 連載第1回では、情報システム部門が抱える課題について探り、第2回では、ビジネス部門が抱える課題について話した。今回は、両部門が抱えるジレンマをどのように脱するかについて考えていきたい。

既存事業と既存システムをアップグレードするのは困難

 連載第1回「何故、DXは進まない? 情報システム部門が抱える課題」では、DXが進まない理由の一つとして、情報システム部門が抱える課題について深堀りした。続く第2回「なぜ話が折り合わない? ビジネス部門が抱える課題」では、もう一方の理由、ビジネス部門が抱える課題について、市場環境が急速に変化しており、需要を満たすことよりも顧客体験価値が重視されていることについて話した。

 顧客体験価値を満たすためには、すべてのチャネルで同様の操作性やサービス提供が必要になるだけでなく、求められる顧客体験も頻繁に変わる。そのため、実現に向けてUXはもちろん、システムの構造自体が適した形で作られている必要がある。しかし、お分かりのように今の情報システム部門はそれを満たせる状況にはない。

 まず、このジレンマを解決するためには、大きな転換が必要だということを、あらためて認識してもらう必要がある。

 ビジネス部門が売上と利益を生み続けて会社に安定と成長をもたらすためには、常に顧客にすぐれた体験価値を提供し続けなくてはならない。そのためには、移り変わりやすい顧客ニーズを探りながら、常にPDCAサイクルを回すことで顧客の要望にフィットしていくことが重要だ。つまり、終わりのないシステム改修と追加機能の開発が必須になる。

 一方、情報システム部門がそれに応えるには、あらゆる不可能に挑戦しなくてはいけない。まずは、レガシーシステムを捨てることが必要だ。それには、代わりとなる新システムが必須となるが、その予算と人的リソースの両方を捻出しなくてはいけないし、ブラックボックス化している仕様も解明しなくてはいけない。

 既にSaaSやパッケージシステムが流通しているのなら活用する手もあるだろう。しかし、残念ながら現状世の中にあるSaaSやパッケージシステムの多くは、PDCAサイクルを回しながら常にUIを改善するために必要なAPI化が遅れており、結局カスタマイズが必要になることも多い。

 さらに深刻なのは、PDCAサイクルを回して顧客のニーズを探ることのできるスキル、すなわちデザイン思考ができる人材や、それらのニーズをスマホやタブレット、PCベースのブラウザなど様々なデバイスで具現化できるエンジニアが不足していることだ。

 この出口がないデッドエンドの状態から抜け出すための正攻法は、次の2つだろう。

  1. 高額な予算を確保してでもレガシーを更改する
  2. 現在のレガシーをSoRとSoEに分離した上で、SoR部分をAPIでラッピングし、SoE(スマホ〔アプリやLINEなどのSNS〕やタブレット、PCベースのブラウザといった顧客体験が発生するインタフェース)の構築をシンプルかつ容易にする

 しかし、このどちらも先に述べた情報システム部門の課題があるため、いばらの道だ。1の場合、仕様がわかっていない場合には、わかっている人を探す時間が余計にかかる。それでも不明点が残るため、稼働後に処理されない取り引きが出てくるといったトラブルの不安が稼働後数ヵ月はつきまとうだろう。さらに、今の時代には当たり前となった戦略的重要性がまるでないシステムに大金をつぎ込むことになる。

 それでいて、PDCAサイクルを回しながら常にUIを改善していくことができるような、柔軟性を持ったシステムになるかというと、それも疑わしい。なぜなら、最新のマイクロサービス・アーキテクチャを取ったシステムを設計するスキル、基幹システムのしっかりとした設計をしてきた経験の両方を満たすエンジニアは、ほとんどいないからだ。その上、レガシーを更改するプロジェクトは、多くの企業で始動しているため日本全体でエンジニアが不足している。

 では、2はどうかというと、これも一筋縄ではいかないだろう。現行のシステムに追加するだけとはいえ大きく手を入れるため、既存の機能に影響を及ぼさないように慎重にやっていかなくてはならないし、古いプログラミング言語でどこまでAPI化が可能なのかという制約もあるだろう。さらには、スケーラビリティをどのように確保するのか、AWSやAzureのようなパブリック・クラウドに載せ変えることができるのかといった異次元の課題を解決していかなくてはならないからだ。

 なお、SoRとSoEに加えて、情報系システムやAIなども含めたシステムの役割分担を考慮すると、下図のような構成にすると良いと言われている。

システムの分離イメージ
システムの分離イメージ
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「廉価版ビジネス」という解決法

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この記事の著者

兼安 暁(カネヤス サトル)

1991年から1998年までアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)で、基幹システム、BI・DWH システムの設計・導入を実施。カルチュア・コンビニエンス・クラブのグループ会社に入社後は、IT戦略立案・実行、Tポイントの立ち上げを行う。その後、エンプレックス株式会社(現SCSK...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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