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アドビ、Walgreens、NIKEが語ったデジタルエコノミー勝利の条件

Adobe Summit 2022 レポート


 2022年3月16日から17日にかけ、アドビはオンライン年次イベント「Adobe Summit 2022」を開催した。例年、同イベントはCEOのシャンタヌ・ナラヤン氏がホストを務め、業界リーダーや著名人が数多く登壇し、これまでの取り組みを共有する。この記事では、基調講演に登壇したグローバル企業のリーダーであるWalgreens、NIKEの話を中心に、顧客体験の視点からDXを考える。

パーソナライゼーションでも重要になるスケーラビリティ

アドビ 会長兼CEO シャンタヌ・ナラヤン氏
アドビ 会長兼CEO シャンタヌ・ナラヤン氏

 最初に登壇したナラヤン氏は、デジタルエコノミーにおけるパーソナライゼーションの重要性を強調した。この2年間で、世界は急速に進むデジタルシフトを経験している。オンラインショッピングはすっかり私たちの生活に定着した。2021年のeコマースの取引高は10億ドル以上で、2022年は米国だけで1兆ドルを突破する勢いである。オンライン環境でヘルスケアや教育のサービスを受けることにも慣れてきた。

 また、ゲームやコンサートの体験の場にも変化が見られる。2021年の終わり頃からWeb 3.0やメタバースへの関心も高まってきた。ナラヤン氏はこれらのトレンドを踏まえ、「デジタルが個人に力を与え、ビジネスを変革し、コミュニティの結び付きを強めた結果、デジタルエコノミーがかつてないほどの規模に成長しています」と分析した。

 企業も顧客ニーズに対応しようと、デジタル戦略を立て、オペレーションを変えようと奮闘している。今やDXはあらゆるビジネスの会話を支配するトピックとなった。アドビが考えるデジタルエコノミーにおける競争優位性の源泉は、顧客体験のパーソナライゼーションである。アドビは一貫してこのメッセージを発信し続け、その実践をサポートするべく、データとコンテンツの2つに着目して製品を強化してきた。

 「私たちはCMOとCDOのニーズに焦点を当てた最初の企業です」とナラヤン氏は語る。Adobe Experience Cloudは、カスタマージャーニーのあらゆる側面の最適化を支援する包括的なクラウドアプリケーション製品であり、多くの企業が利用している。

 ナラヤン氏に次いで登壇したチャクラバーシー氏も、顧客1人ひとりの好みを尊重するパーソナライゼーションの実践を訴える。パーソナライゼーションのアイデア自体は目新しいものではない。しかし、これからのビジネスでは「パーソナライゼーションをスケールさせることが成功要因になる」と、チャクラバーシー氏は指摘した。つまり、リアルタイムに大勢の顧客に対してパーソナライゼーションを実践する。しかもオンラインとオフラインの両方で、1人ひとりの顧客のプライバシーを尊重した上でリアルタイムに提供する。

アドビ デジタルエクスペリエンス事業部門代表 アニール・チャクラバーシー氏
アドビ デジタルエクスペリエンス事業部門代表 アニール・チャクラバーシー氏

 これは企業にとってはチャレンジだ。というのも、サードパーティーCookie規制の影響で、ファーストパーティーデータがビジネス活動の生命線になりつつあるからだ。だが、各部門に散在するデータを整理し、使いたい時にすぐに使えるデータプラットフォームを整備している企業がどれだけあるだろうか。プライバシーは顧客との信頼関係の構築に不可欠なものだが、実際に1人ひとりのプライバシーを尊重するには、高度な仕組みが必要だ。

 アドビは、アプリケーションを支える顧客データ基盤「Adobe Real-Time CDP」の機能強化に重点的に取り組んできた。チャクラバーシー氏は、「Adobe Targetとの連携によるリアルタイムセグメンテーション」「OneTrustとの連携による同意を得たデータの利用」「Real-Time CDP Connectionsによるデータ収集の高速化」などの新機能を紹介し、企業のCX提供の新しい要件に対応できることを強調した。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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