パーソナライゼーションでも重要になるスケーラビリティ
最初に登壇したナラヤン氏は、デジタルエコノミーにおけるパーソナライゼーションの重要性を強調した。この2年間で、世界は急速に進むデジタルシフトを経験している。オンラインショッピングはすっかり私たちの生活に定着した。2021年のeコマースの取引高は10億ドル以上で、2022年は米国だけで1兆ドルを突破する勢いである。オンライン環境でヘルスケアや教育のサービスを受けることにも慣れてきた。
また、ゲームやコンサートの体験の場にも変化が見られる。2021年の終わり頃からWeb 3.0やメタバースへの関心も高まってきた。ナラヤン氏はこれらのトレンドを踏まえ、「デジタルが個人に力を与え、ビジネスを変革し、コミュニティの結び付きを強めた結果、デジタルエコノミーがかつてないほどの規模に成長しています」と分析した。
企業も顧客ニーズに対応しようと、デジタル戦略を立て、オペレーションを変えようと奮闘している。今やDXはあらゆるビジネスの会話を支配するトピックとなった。アドビが考えるデジタルエコノミーにおける競争優位性の源泉は、顧客体験のパーソナライゼーションである。アドビは一貫してこのメッセージを発信し続け、その実践をサポートするべく、データとコンテンツの2つに着目して製品を強化してきた。
「私たちはCMOとCDOのニーズに焦点を当てた最初の企業です」とナラヤン氏は語る。Adobe Experience Cloudは、カスタマージャーニーのあらゆる側面の最適化を支援する包括的なクラウドアプリケーション製品であり、多くの企業が利用している。
ナラヤン氏に次いで登壇したチャクラバーシー氏も、顧客1人ひとりの好みを尊重するパーソナライゼーションの実践を訴える。パーソナライゼーションのアイデア自体は目新しいものではない。しかし、これからのビジネスでは「パーソナライゼーションをスケールさせることが成功要因になる」と、チャクラバーシー氏は指摘した。つまり、リアルタイムに大勢の顧客に対してパーソナライゼーションを実践する。しかもオンラインとオフラインの両方で、1人ひとりの顧客のプライバシーを尊重した上でリアルタイムに提供する。
これは企業にとってはチャレンジだ。というのも、サードパーティーCookie規制の影響で、ファーストパーティーデータがビジネス活動の生命線になりつつあるからだ。だが、各部門に散在するデータを整理し、使いたい時にすぐに使えるデータプラットフォームを整備している企業がどれだけあるだろうか。プライバシーは顧客との信頼関係の構築に不可欠なものだが、実際に1人ひとりのプライバシーを尊重するには、高度な仕組みが必要だ。
アドビは、アプリケーションを支える顧客データ基盤「Adobe Real-Time CDP」の機能強化に重点的に取り組んできた。チャクラバーシー氏は、「Adobe Targetとの連携によるリアルタイムセグメンテーション」「OneTrustとの連携による同意を得たデータの利用」「Real-Time CDP Connectionsによるデータ収集の高速化」などの新機能を紹介し、企業のCX提供の新しい要件に対応できることを強調した。