AlloyDBが製品ポートフォリオに加わった背景
世界中の企業がデータ活用やAIプロジェクトへの投資に意欲を示している。その一方で、データから価値を引き出せずに悩む企業も多い。その背景には、企業のデータ活用ニーズが大きく様変わりしたことがある。データを見ながら、迅速に意思決定を行いたいとするビジネスニーズの高まりに、旧態依然としたデータベース環境では対応できなくなってきた。以前であれば、経営会議用にERPのトランザクションデータをBIで売上レポートを提供する場合のペースは月次でもよかった。ところが今は、売上低下の理由を探るため、もっと細かい切り口で“その場で”データを分析したいとする要望が当然のことと受け止められている。このニーズに対応しようにも今のままではできない。このような分析ワークロードに関する悩み話はよく聞くところだ。さらに、最近では前述のような典型的な分析ワークロードだけでなく、AIのモデル構築のために大量のデータセットを扱うワークロードも増えてきた。
OLTPか分析か。データウェアハウスかデータレイクか。これまでのように、ワークロードの種類やデータセットの大きさに合わせたデータベースソリューションの選択では限界がある。この企業の悩みを解決するため、Google Cloudはユースケースを問わずにデータを扱える「制限のないデータクラウド」を提供しようと考えた。
最初に登場したグーグル・クラウド・ジャパン合同会社 ソリューション&テクノロジー部門 技術部長(データクラウド)寳野雄太氏によれば、Google Cloudのデータベースのポートフォリオは大きく2つある。1つが「マネージドサードパーティーデータベース」と呼ばれるもので、PostgreSQLやMySQLのようなOSS、あるいはSQL ServerをGoogle Cloudの環境で運用するもの、そしてもう1つがCloud Spannerのような「クラウドネイティブデータベース」である。
Cloud Spannerは、「コンピュートとストレージの分離」というGoogle Cloudの哲学を反映し、スケーラブルな分散型データベースとして開発されたものである。Google Cloudは、前述のビジネスニーズに対応しようとする企業は、商用データベース環境から脱却し、OSSに移行すると考えた。その動きを見越し、Cloud SpannerでもPostgreSQLインターフェースを用意してきた。ところがそれでも問題になるのが、OSSと商用製品が満たしている企業要件とのギャップである。このギャップ解消のための製品が、PostgreSQLとの完全互換性を有する「AlloyDB for PostgreSQL(以降、AlloyDB)である。
寳野氏は「AlloyDBが製品ポートフォリオに加わることで、Google Cloudはお客様のPostgreSQLへのモダナイズの支援の選択肢を増やし、お客様のPostgreSQLへのモダナイズを支援することになります」と述べた(図1)。