上場後初の黒字化と日本市場の売上拡大の理由
──上場後、業績が順調のようです。
橘:おかげさまで堅調な成長を続けています。キーポイントは3つあります。売上収益は42億円で、前年同期比増収率は直近3年間で最高の53%、売上総利益は前年同期比60%増と大幅に成長。売上総利益率は50%に改善しました。
米国市場における売上収益は前四半期比180%を超える増加で、売上収益は全体の9%に到達しています。アジア発のソフトウェア企業として、米国市場でここまで伸びている企業は、あまりないのではないかと思います。
2つめは、2022年第1四半期は上場以来初めて営業利益黒字化を達成したことです。300万円というわずかな金額とはいえ、収益性の改善が大きく進んだことは重要だと思います。
3つめは、事業指標の改善が継続し、過去最高の水準になったことです。お客様の維持と継続的な収益を見るための指標であるLTM NRR(売り上げ維持率)は過去最高の126.5%まで拡大し、顧客企業数は 281社純増(前年同期比32%増加)の1,158社。オーガニックでの過去最高の前年同期比の増加数です。さらに、月次顧客解約率は0.67%と過去最低レベルまで改善しています。
──新興企業ではコロナ禍によるリモートワークなどでコストが低下し、増益につながるという傾向がここ数年ありましたが、Appierの増益はそれとは違う要因でしょうか?
橘:AIのトレンドが背景にあると思います。特に先進国のプライバシー重視の流れで、クッキー利用制限などもあり、その制約を克服するためのAI利用に関する引き合いが実際に増えています。
もうひとつは、弊社の主要サービスのAIの精度が上がったことです。収益率が48%から50%に改善したのは、AIのアルゴリズムの進化が理由です。コストセーブによる黒字化ではなく、事業拡大の投資を行って売上を伸ばした上での黒字化です。人員体制も大幅に強化しています。
今後の売上成長率も平均30%強は維持できると考えています。2025年度には売上総利益率は55%から60%、営業利益は15%から20%を目標に据えています。
中国市場の減速リスクの影響はなし
──世界的に見た場合、市場での伸びはどのような傾向ですか?
橘:日本と韓国を含む北東アジア地域の収益は全体の63%、台湾、香港、中国といったグレーターチャイナ地域が23%です。米国は全体の9%ですが、参入したのは2020年の終わりなので、1年で急速に成長しています。特に、eコマースやゲームでの引き合いが強いことが特色です。
──中国市場全体としては、ここ数年成長が鈍化していますが、その影響は?
Appierでは、中国インターネット企業の海外展開の支援をおこなっていますが、そこが非常に伸びていて停滞はありません。なぜかというと、去年の夏頃から中国政府が国内インターネットの規制強化を行ったことで、中国企業の海外進出が加速し、弊社の追い風になっているからです。