データリテラシーに関する経営者と社員の認識の相違
「データは21世紀の石油」と言われて久しい。今では世界中の企業が競うように全社レベルでのデータ活用に取り組んでいる。一方で、組織の内情を見ると、可視化からデータアナリティクスへの全社的なステップアップに成功した日本企業は少数派だ。データドリブン経営に取り組む企業を支援するTableauはTableau Cloudを発表した。2022年6月7日に行われた記者説明会の内容から、最新の製品機能を紹介する。
Tableauは「あらゆる人々がデータを見て理解できるようにすること」をミッションに掲げる。パンデミック発生から、サプライチェーンの危機、物価高騰と、企業は次々に起きる前例のない出来事に対応しなくてはならなくなった。とは言え、これから何が起きるかを予測することはできない。だからこそ、データは日常生活でもビジネス活動でも羅針盤の役割を担うことができる。それでも、複雑かつ変化の激しい経済環境で持続的成長を達成することは容易なことではない。「挑戦する企業に向け、最善の方法で導くのがITベンダーの責任と認識している」と佐藤氏は話した。
佐藤氏は、Salesforceとの統合以前から力を入れてきたデータカルチャーの醸成について触れ、「誰もがデータを探索する力を持ち、ビジネス成功のためにそれぞれの役割を果たすことが必要」と語る。米Forrester ConsultingがTableauに代わって実施したデータリテラシーに関する調査結果から、日本企業に関するものを抜き出したものを見ると、日本企業の経営者の9割が、自社の社員全員が基礎的なデータリテラシーを持つことを期待しているとわかった。また社員も、業務でデータを利用する場面が増えると予想している。ところが、同調査では、「75%の経営者が社員にデータスキルを提供していると考えているのに対し、40%の社員しかそれに同意していない」と判明したのだ。つまり、日本企業のその期待とは裏腹に、企業経営者はトレーニングの機会提供に消極的なのである。
この結果を重く見て、佐藤氏は「データリテラシーのプログラムを組織レベルで展開する必要がある」と訴えた。この調査では「トレーニングを実施できるスキルのある人材の不足」「データスキル向上のための知識不足」「データカルチャーの欠如」の3つの課題も明らかになった。この課題開発に向け、Tableauは3つの切り口で企業をサポートする。
まず「リーダーシップ」である。具体的には、リーダー自らがデータ人材となり、ロールモデルになることだ。例えば、ヤフーなどは、データチャンピオンが組織のトップで、データドリブンにするべく組織全体を牽引していることで知られる。次に「内部コミュニティ」である。佐藤氏は、「全社レベルでデータカルチャーが浸透している企業は、組織の内部に活発に行動するコミュニティがある点で共通する」と指摘する。トレーニングも効果的だが、社員相互のコミュニケーションの活性化がアナリティクスの成熟度を高めることにつながるのだという。コミュニティは実践リーダーがストーリーを共有する機会を作ることに役立つ。そこで刺激を受けた社員が「やってみよう」と続くことで、持続的な実践が可能になるわけだ。
Tableauのユーザーコミュニティは全世界で100万人以上の規模に成長したが、「もっと増やしたい。社内だけでやるのは限界があるので、戦略的に外部と関わるようにしてほしい」と佐藤氏は呼びかけた。3つ目が「戦略的パートナー」の存在である。日本でもパートナーと協業し、トレーニングプログラムを大学に提供する準備を進めている他、日本語でのオンライン自習環境の提供を開始した。