2つの新機能「データストーリー」と「モデルビルダー」
エージェンスタット氏は、Tableau Cloudの2つの新機能を紹介した。その1つが「データストーリー」である。どんなに美しいダッシュボードを作っても、重要なインサイトを瞬間的に得られるとは限らない。そんな時、データを見ての解釈を助けてくれるのがデータストーリーである。

例えば、ダッシュボード上に全米の州ごとに集計したデータがあるとする。ユーザーが特定の州にポインターを当てれば、その州の傾向を言葉で説明してくれる。別の州にポインターを移すと、また別の説明が得られる。裏側ではその都度データストーリーが説明を作成している。この機能は当面英語のみの提供だが、ブラウザーの翻訳機能を使えば、少々ぎこちない表現になるものの、日本語で大筋を把握することは可能だ。佐藤氏が話したように、データサイエンティストなどの一部を除き、組織のほとんどの人たちは、データを使いこなすことが困難なデータリテラシーの問題を抱えている。エージェンスタット氏は「アナリティクスの間口を拡げることに役立つ」と、データストーリーへの期待を示した。
もう1つの機能が「モデルビルダー」である。これはデータサイエンスの民主化を促進するもので、Tableau CloudにSalesforce Einsteinテクノロジーを統合することで実現した(図3)。

これも大企業のデータ活用ニーズに応えるもので、過去に何が起きたかを理解するだけでなく、近い将来に何が起きるかを予測する「プレディクティブアナリティクス」を統合したことになる。データストーリーと同様に、モデルビルダーも特別なスキルがなくても一般の社員が手軽にインサイトを得られるようにする機能である。
裏側ではSalesforce Einsteinが動いている。現在のEinsteinは、1日に1,520億件以上の予測を実行している。Tableau Cloudを使うビジネスユーザーは、モデルビルダーでTableauから離れることなく、Einsteinの予測モデルを利用できるようになった。モデルビルダーでは、Tableauを使うビジネスユーザーのため、機械学習で予測を行う時のモデル構築から展開までのプロセスの大部分を自動化している。そのため、データサイエンティストに頼らずとも、ビジネスユーザーが望む結果をビジネスユーザー自身で得られるという。ダッシュボード上で使えるので、「BIとAIを連携した予測ができる」とエージェンスタット氏は説明した。
SalesforceユーザーもよりBIを使いやすく
Salesforceグループの一員ではあるが、今後もTableauはセルフサービス型のBI製品の提供を継続する。加えて、「CRM Analytics」「Revenue Intelligence」のように、SalesforceユーザーのためのSalesforce Customer 360に特化したネイティブのアナリティクス製品の機能強化も、別途進める方針だ。
CRM Analyticsは、Customer 360のどのアプリケーションからでも、データの理解とインサイトの獲得を行い、インサイトに基づく意思決定を支援するもの。一方、Revenue Intelligence は、Sales Cloud とTableau を連携させ、商談獲得から受注までのライフサイクル全体を通じたインサイト獲得を行い、営業の意思決定を支援するものである。
Customer 360の各クラウドアプリケーションのデータは、企業と顧客のインタラクションを通して生まれる。この宝の山をSalesforceユーザーとTableauユーザーの両方が有効活用できるよう、Tableauはより容易にデータからインサイトを引き出せるようにサポートしていく。