情シスは社内のカスタマーサービス部門だと気づいた
「情シス人材のシェアリングサービス」というユニークなビジネスを展開するDXER(ディクサー)。代表取締役 CEOの向井 拓真氏は楽天で新規市場開拓に従事した後、グリーの子会社を経て、マーケティングオートメーション(MA)を提供するHubSpot Japanの3人目のカスタマーサクセスとデジタルマーケティングでキャリアを積み起業した。その動機は、Web企業の立場として日本の伝統的な企業に対して支援をしてきて感じた問題意識だった。
「始めの頃はスタートアップ系の企業が多かったのですが、次第に日本の大手企業や創業100年以上の企業の支援が増えてくると、『ツールだけ提供しても無理かな』という考えにいたったんです」(向井氏)
日本の企業のデジタルトランスフォーメーションを浸透させるためには、情報システム部門にツールを提供するだけでなく、経験してきたクラウドやSaaSの知識を伝達し、導入や開発の中で伴走していく役割が重要と考えた。
「これからの情報システム部門は、ユーザーにデジタルの成功体験を提供していくカスタマーサービスだと思っています」(向井氏)
会社名には、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向きあっていくという意味が込められている。DXを進めるために、会社の中のカスタマーサービス部門である「情シス」に向きあっていこうと決めた。パートナーとして声をかけたのが、情シス部門で数々の経験を積んだ梶原成親氏だった。二人は楽天時代からの仲だ。
梶原氏は、楽天のプロダクトオーナーとしてスクラムでの開発および運用体制を確立。その後リクルートライフスタイルに移り、SIer主導のレガシーな開発チームから自立させ、持続的に成長できるチームへ変革させた。 次のプレイドではモダンな情報システムを担当し、Oktaによるシングルサインオン化。アカウントプロビジョニング完全自動化、Jamfなどによるアカウント統制など上場に向けたセキュリティ対策を担当している。
まさに「レガシーからモダンへの移行」の課題を解決するためのうってつけの人物だった。そんな梶原氏が、今注目しているのが「SaaSOps」という潮流だという。
「SaaS」を中心にした業務設計が求められている
SaaS先進国とされる米国においては、日本企業の約10倍のSaaSが扱われているとされ、2021年では、1企業が利用するSaaSの数は110に及ぶという。各部門に導入されたSaaSを効率的に運用・管理を行う役割として提唱されているのが「SaaSOps」だ。(*1)
*1:引用元 BetterCloud「State of SaaSOps 2021」より
「110ものSaaSを使う米国企業に比べると日本企業はまだまだ少ないとは思いますが、コロナ禍をきっかけに導入が進んだのは事実で、今後も米国に近づいていくと思います。そうした中で情シスの業務も変わっていかざるをえない。社員のIDの管理だったり、利用するITの資産やパソコンの活用の支援もリモートになります。これまでの社内のヘルプデスクとしての役割にプラスして様々な管理業務が増えると思います」(梶原氏)
こうした管理業務に加え、それぞれのSaaS/クラウドの設定や活用支援、開発の業務が膨大になる。そうした課題に現状の情シスの人員やスキルでは対応に限界がある。さらに言えば、業務プロセスそのものをSaaSに適合する形に再編する必要もあるという。
米国BetterCloud社の調査によると、オンプレミスなど従来型の社内システムを前提にした企業と、SaaSを中心に業務設計された企業では、当然のことながらDXの進捗度合いの差が開き、前者の企業はリモートワークやハイブリッドワークへの対応の遅れから競争に劣後してしまう。日本企業をこうした制約から解き放ち、SaaSに最適化した企業(SaaS Powered Workplace)にしていくことが、彼らのミッションだという。
SaaSに先進的なスタートアップ企業だけではなく、大企業から『一人情シス』の企業まで、情シスの業務をスマートにしていくための支援サービスが「シスクルシェアリング」だ。