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EnterpriseZine Day 2022 レポート

「DX推進は第二幕に」経産省 和泉憲明氏が説く“三位一体”のDXとは

EnterpriseZine Day 2022 基調講演:デジタル化の本質とDX推進に関する政策展開

 新型コロナウイルスという不幸な事案も重なり、多くの企業がグローバルなデジタル競争の渦に巻き込まれる中、いち早い日本企業のDX推進が求められている。そうした状況を、DXレポートの政策担当官がどのように見ているのか、また国としてどのような政策を展開し、支援しようとしているのか。経済産業省 商務情報政策局・情報経済課・アーキテクチャ戦略企画室・室長の和泉憲明氏が、国内外のデジタル化の事例や動向を交えながら解説し、最新の『DXレポート2.2』や『デジタル産業宣言』、そのガイダンスのとりまとめ状況について紹介した。

「DX」とは、どのような変革なのかを見つめなおす

 DXは100年に一度の大変革ともいわれ、多くの人は戸惑いつつも、明治維新やそれ以前の大変革期を乗り越えた偉人たちを参考にしようとするだろう。しかし和泉氏は、「そうした人々が、はたしてその前の大変革期の先輩達を参考にしようと思っただろうか」と投げかけ、さらに、IT技術者が陥りやすい傾向として、John Seely Brown著『なぜITは社会を変えないのか』から「ハンマーを持つ人」を引用。「技術というハンマーをもっていると、すべてが釘に見える=活用法や目先のことばかりに気を取られ、本質的な改革に至らない」と語り、「企業や組織の競争戦略には、『better=改善』と『different=別物』の2通りがある。IT技術者の役割は、デジタルで社会がどのように変わるのか、どうデザインするかにあるのではないか」と訴えた。

 デジタル時代では、いいものを作っていれば売れるということが成り立たない──。誰もがそう認識、理解しているに違いない。その本当の意味を象徴するのが、コンピューターシステムというウィンドウの窓、そしてリアルな窓の2つだという。まず、リアルな窓から見れば、かつての街の景色が馬車から自動車に取って代わられたように、現代の人々の生活から一つの場面を切り取った写真には、いまや必ずスマホが映っていることが多い。ごく当たり前と思っている日常生活が、ここ10年でガラッと変わってしまった。一方、パソコン内の窓を見てみると、あまりにもUI/UXが悪い物が多い。業務システムのインターフェイスはホストコンピュータ時代から変わっていない可能性さえ否めない。

 和泉氏は「24時間スマホを持ち歩くような時代にあって、どのような価値を提供するのか。デジタルによる収益化とは、デジタルのインフラの中でスケールするようなビジネス、あるいは国境が消え、広がっていくようなものであるはず」と投げかける。

経済産業省 商務情報政策局・情報経済課・アーキテクチャ戦略企画室・室長 和泉憲明氏
経済産業省 商務情報政策局・情報経済課
アーキテクチャ戦略企画室・室長 和泉憲明氏

 それは今に始まったものではなく、『DXレポート2』(あるいは『DXレポート2.1』)で既に触れられていたことであり、人口減による市場縮小の中、既存産業として「パイ」を奪い合う「1階の産業」、そしてデジタルを中心に世界規模のスケーラビリティが期待できる「2階の産業」として表現されている。今までのIT産業は1階で、2階にはDX・デジタルと言いかえられた形の新たな産業があることを強調してきた。たとえば、1階の産業を支えるオンプレミスサーバーの市場は年間10%以上も縮小しているのに対して、2階のクラウドインフラは年率37%で急成長しているという。

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 しかし、多くの企業にとっては「我が事と思えない」というのが実状のようだ。たとえば、コンテンツ業界では優れた作家の世界観を、優れたクリエイターが集まり、真摯に再現するというのが業界の定番であり強みだった。しかし、いまやオンラインでアクセス状況や課金状況が手に取るようにわかる。そのため、経験あるディレクターの判断がときにデータによって覆されることも多々生じているという。和泉氏は「こうしたことは、グローバル企業や大企業に限ったことではない。規模の大小に関わらず、さらには地方でも都市部でも等しく同様に進んでいくだろう」と語る。

 たとえば、京都のHILLTOP社は、元々はアルミ切削の工場で価格競争に対峙していたところ、DXを実現。職人が削り出すスタイルから、データによる最適化により自動的に削り出すスタイルへと進化させた。図面からプログラム、3Dシミュレーション、実際の削り出しまで短期間で行えるようにしたことで、試作品など少量の注文が8割を占め、短納期対応を重ねる中、利益率が20%以上に急上昇したと言われている。

 さらに米国からの注文を受けるようになった現在、米国にも拠点を設立している。受注は米国、プログラムは日本、削り出しと納品は米国という連携によって、いわば京都の町工場がグローバル企業へと躍進したわけだ。

 和泉氏は、「DXの本質、いわばデータとデジタル技術活用のポイントは、経営環境の変革にある。つい日本では、業務の標準化というと作業効率化やムダを省くことなどに注力しがちだが、本質は経営判断の高度化にある」と強調する。

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デジタル化の本質としてのデータ活用

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この記事の著者

伊藤真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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