目指したのは、手作業のCSVや表計算ソフト作業の一掃
「スポーツをもっと身近に」というパーパスのもと、スポーツの総合物販・サービスを提供するアルペングループ。全国におよそ400店舗を構え、会員数800万人、取り扱いアイテムのSKU(Stock Keeping Unitの略で、受発注・在庫管理の最小単位)は1000万を超える。
蒲山氏は、2019年からアルペンに参画。情報システムの責任者として、同社のITを刷新する役目を担う。当時同社のITシステムは、過去に外注依頼した基幹システムに、物販のための発注系、物流系、店舗系から生じるデータを統合していた。
そして経営判断に利用するデータやその分析は、基幹システムからCSVや表計算ソフト用ファイルを出力し、それを手作業で加工し作成していた。蒲山氏は前職のコンサルタントとしての経験を活かした視点で、当時のITシステムの状況を確認。「業務内容はほとんど表計算ソフト作業であり、この作業時間を削減することで“考える時間”にシフトさせる必要性を感じました」と、既存システムの刷新に至った経緯を振り返る。
そこで、システム変更のために外注してみると、「コストが発生するだけでなく変化に対して柔軟な対応を取りにくい」「内製化するための人材が不足している」「既存のシステムはブラックボックスで手を入れにくい」……といった状況が判明。そこでツール導入での対応を目指し、比較検討の上で2019年後半にSaaS版「Board」を採用したという。
まず、蒲山氏は膨大な表計算ソフトによる作業の一掃を目指す。既存の基幹システムには手を触れず、そこから出力されるCSVやファイルをすべて手作業でBoardのデータベースに入力。その後、取り込んだデータの表示画面を作成し、レポートとして出力する作業を推進する。
レポート生成までの流れが、プロトタイプとして他部門にも見せられるようになった時点で、実務部門の巻き込みを始めたという。どのようなデータをどう扱い表示すれば実務に役立つのかをディスカッション。実務部門のフィードバックをIT部門に送り、データベース設計や画面構築を修正し、実務部門が検証するといったアジャイルな体制で開発を進めた。
蒲山氏は「結果的にはBoardの専任として1名、あとは私やマネージャーといった管理職が0.3名ぐらいの体制で、既存システムに一切手を加えることなく稼動を開始できました」と少ない人員でも対応できたと振り返る。