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アルペングループが進めた“レガシーとExcel”からの脱却 400店舗1000万SKUのデータ活用へ

経営判断に大きく寄与する「Board」を活用したデータドリブン戦略


 コロナ禍や東欧の軍事侵攻といった厳しい社会情勢、インフレによる経済悪化など、近年私たちの身の回りは高速にその様相を変えている。この激流を生き延びるには、小売においてもスピーディーで精度が高い経営判断が必要だ。しかし、いまだ重要な判断の根拠は、人手による表計算ソフトの集計値というケースも多い。こうした現状を一掃し、データドリブンな経営を目指せるツールがBoardだという。本稿では2022年7月22日に開催されたオンラインイベント「Board Day Japan 2022」において講演された、アルペン 執行役員 デジタル本部長 兼 情報システム部長 蒲山雅文氏の事例セッションをレポートする。

目指したのは、手作業のCSVや表計算ソフト作業の一掃

 「スポーツをもっと身近に」というパーパスのもと、スポーツの総合物販・サービスを提供するアルペングループ。全国におよそ400店舗を構え、会員数800万人、取り扱いアイテムのSKU(Stock Keeping Unitの略で、受発注・在庫管理の最小単位)は1000万を超える。

 蒲山氏は、2019年からアルペンに参画。情報システムの責任者として、同社のITを刷新する役目を担う。当時同社のITシステムは、過去に外注依頼した基幹システムに、物販のための発注系、物流系、店舗系から生じるデータを統合していた。

 そして経営判断に利用するデータやその分析は、基幹システムからCSVや表計算ソフト用ファイルを出力し、それを手作業で加工し作成していた。蒲山氏は前職のコンサルタントとしての経験を活かした視点で、当時のITシステムの状況を確認。「業務内容はほとんど表計算ソフト作業であり、この作業時間を削減することで“考える時間”にシフトさせる必要性を感じました」と、既存システムの刷新に至った経緯を振り返る。

 そこで、システム変更のために外注してみると、「コストが発生するだけでなく変化に対して柔軟な対応を取りにくい」「内製化するための人材が不足している」「既存のシステムはブラックボックスで手を入れにくい」……といった状況が判明。そこでツール導入での対応を目指し、比較検討の上で2019年後半にSaaS版「Board」を採用したという。

レポート作成のため、表計算ソフトの作業に時間を費やしていた
レポート作成のため、表計算ソフトの作業に時間を費やしていた
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 まず、蒲山氏は膨大な表計算ソフトによる作業の一掃を目指す。既存の基幹システムには手を触れず、そこから出力されるCSVやファイルをすべて手作業でBoardのデータベースに入力。その後、取り込んだデータの表示画面を作成し、レポートとして出力する作業を推進する。

 レポート生成までの流れが、プロトタイプとして他部門にも見せられるようになった時点で、実務部門の巻き込みを始めたという。どのようなデータをどう扱い表示すれば実務に役立つのかをディスカッション。実務部門のフィードバックをIT部門に送り、データベース設計や画面構築を修正し、実務部門が検証するといったアジャイルな体制で開発を進めた。

 蒲山氏は「結果的にはBoardの専任として1名、あとは私やマネージャーといった管理職が0.3名ぐらいの体制で、既存システムに一切手を加えることなく稼動を開始できました」と少ない人員でも対応できたと振り返る。

既存システムはそのままに、トライアル稼働した
既存システムはそのままに、トライアル稼働した
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成功例を元に、全社展開を目指す。データドリブンへの第一歩

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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