アノニマスに対抗すべく組織された「キルネット」
キルネットは、現ロシア政府を支持している脅威アクター(攻撃主体・攻撃者集団)。近年は日本の政府や企業を含めて、ウクライナを支援している相手を標的としてサイバー攻撃を主張している。第1回にも書いたが、攻撃者の種類としては政治的な信念・主張を持って攻撃を仕掛ける「ハクティビスト」にあたる。彼らは規模的には4,500人以上が参加していると語る親ロシア系の脅威アクターではあるが、創設以来(ロシア連邦の)情報機関の依頼を受けたことはないと主張しているらしい。2022年2月に国際ハクティビスト集団である「Anonymous(以下、アノニマス)」がロシア連邦へのサイバー戦争を宣言したが、キルネットはこれに対抗するため、同年3月に組織された「国を守るために立ち上がった、全国各地から集まった普通の一般人」とのことだ。
彼らは結成以降、反ロシアの姿勢を見せる周辺諸国に攻撃を展開。「日本はウクライナに支援を行っている」として、9月7日には「日本国政府全体に宣戦を布告する」といった内容の動画を投稿するなどしている。彼らの主な攻撃方法は、Webサイトやサーバなど攻撃対象に対して過剰なアクセスや処理しきれないデータを送り付けて対象を遅延から麻痺、ダウンさせることを目的とする攻撃手法「DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack:分散型サービス拒否攻撃)」のようだ。彼らの攻撃は、実際にはその発言ほど脅威ではないとする意見もあるが、油断は禁物だ。
より具体的には、9月6日、政府の情報ポータル「e-Gov」などが閲覧できなくなり、キルネットが犯行声明を出した。彼らの声明によれば、続いてカード会社や鉄道会社、ネット掲示板など民間サービスにも攻撃。また翌7日には日本政府に宣戦布告する、との動画をメッセージアプリ「Telegram」 に投稿している。
逆に、ウクライナに賛同しているアノニマスはキルネットに対し、2022年5月に公式に宣戦布告。キルネットの公式サイトを接続不能へと追い込んでいる。