データドリブンな意思決定のためクラウド型DWH導入を検討
戸辺氏がノバセルに入社したのは、テレビCMの効果測定を可能にする「ノバセルアナリティクス」がリリースされてから半年ほど経った2020年9月のことだった。当時のノバセルでは、データに基づいた意思決定をしていく雰囲気は醸成されていたものの、データ利活用に関する指針が何も定まっていない、言わば曖昧な状況であった。これに対して戸辺氏は「私は完全に振り切ったほうがよいと考え、『データドリブンな意思決定をしていく』と明確に打ち出しました」と語る。
当時のノバセルのデータ基盤は、トランザクション処理や分析処理を一つのリレーショナルデータベースで対処していた。分析処理に関しては社内分析だけでなく、社外ユーザーにプロダクトとして解放していたこともあり、双方に悪影響を及ぼし合う可能性があったという。「ユーザー様にパフォーマンスの悪いサービスを提供する恐れがありましたし、何より自分たちがやりたいことを実現できるだけの基盤が整っていませんでした」と戸辺氏。そこで手始めに、クラウド型のデータウェアハウス(DWH)導入検討を始めた。
戸辺氏はこの取り組みについて、前職時代の経験を振り返る。前職でもDWHを利用していたが、エンジニアリングの知識や製品そのものの知識が必要になるという課題に直面していたという。ただクエリを発行したいだけの利用者にとって負荷が高すぎたのだ。その後、他社製品への移行も検討したが、既に作り込まれてしまっている状態だったため移行は困難を極めた。
2019年の冬ごろ、戸辺氏は海外にいた知人から気になる話を聞く。「『Snowflake』というクラウド型DWHがあり、大手クラウドベンダーからのリプレイスが進んでいる」というのだ。実際に戸辺氏もSnowflakeを見てみたところ、即座に良い感触を得ることができたと振り返る。しかしながら、当時は前述した状況を鑑みて採用には至らず、それ以来Snowflakeのことを気にかけていたという。