サプライチェーン安定化の鍵は、「Oデータ」×「Xデータ」
生産継続のためにサプライチェーンの安定化が重要視されるようになってから、既に数年が経とうとしています。企業が利益を第一に考えていく姿勢は今や時代錯誤であり、従業員を含め、取引先や地域社会といったあらゆるステークホルダーの利益、そして地球環境などにも配慮しなければならなくなりました。
元々災害の多い日本ではBCP(事業継続計画)の観点から、有事の際に被害を減らす対策を予め行うことで、“サプライチェーン寸断リスク”の最小化に努める企業が多いように見受けられます。加えて、昨今では世界的なエネルギー価格の高騰や原材料、半導体など重要物資などの供給不足や、人手不足による物流混乱や生産遅延など、様々なマイナス要素が企業を揺さぶっています。サプライチェーンの混乱は平時でも常態化していると言っても過言ではないでしょう。
加えて、昨今ではサプライヤーが自らの事業方針を見直し、SDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルに対して積極的でない顧客を自社製品の販売先から外す動きもあり、「顧客から選ばれる」企業になることが求められています。
そうしたサプライチェーン全体の安定化のために企業が導入するITツールの一つに、「調達購買ソリューション」があります。調達購買ソリューションは、調達・購買機能および、バイヤー(買い手)とサプライヤー(売り手)との企業間ネットワークを提供するクラウド型システムです。入札から契約交渉、見積もり、発注・受注、検品、請求までを一括管理し、サプライヤーとの取引の効率化やサプライチェーンの可視化によるチェック機能強化での不正取引の撲滅、購買情報の蓄積・分析で適正価格購買の実現などを目指します。
特に、ERPなど統合基幹業務システムとデータ連携し、一連の調達・購買プロセスについて、財務的・人事的な観点からも経営的合理性があるかなどの確認に役立てている企業もあります。
調達購買ソリューションを活用してサプライチェーンの安定化を図るためには、もう一つ必要なことがあります。それは、サプライヤーの現状をタイムリーに把握し、取引体験の向上を図り、関係の向上を図ることです。
たとえば、サプライヤーとの取引において、ストライキによる労働力不足といった労務的な問題、または生産能力を見誤り過剰に受注してしまったことなどが引き金となって、「サプライヤー側が納品を遅延してきた」「一部部品・製品の欠品があった」というケースはよくあることだと思います。また、「今まで継続的にRFPに参加していたサプライヤーが、今回だけは参加しなかった」といった取引を中断するケース、はたまたある日突然「今後の契約を解除することにした」と取引自体を永遠に終わらせてしまうケースも場合によっては見受けられます。
こうした事象に対してこれまでその「理由」を把握することが現場レベルでは行われたケースもありますが、サプライヤーへの全体に対して、会社として組織だって調査するケースはなかなか見受けられませんでした。しかし、今後サプライヤーとの安定的な取引をするためにも、遅延・欠品・契約解除といった重要な局面を迎える前に、常日頃から一連の取引体験についてフィードバックしながら、体験を悪くしている事象がないか、どうやったら改善できるか、分析することが必要となってくるでしょう。
そうした理由・背景を知るためには、少し専門的な言い方ですが「RFP参加率」「製品納品までの日数」「支払いまでに要した日数」といった調達購買ソリューション上に貯まるOデータ(オペレーショナル・データ、業務データ)を取得するだけでなく、そう言った事象が起きた背景・理由を探るための「Xデータ(エクスペリエンスデータ、体験データ)」両方を取得していくことが必須です。