
デジタル庁が発足してから約1年半が経過。中央省庁をはじめとした官公庁全体のDXを担う存在として大きな注目を集めており、とりわけITプロフェッショナルを中心とした民間人材の積極的な起用の成否には、引き続き多くの関心が寄せられている。本誌でも複数回にわたり同庁の人材採用に関する記事を掲載してきたが、今回は2月1日から募集が始まっている「政府DX推進専門員」に焦点を当て、いわゆる一般的な“情シス”の大量採用をなぜ進めているのかを訊いた。
100名以上の規模で情シスやPMなどを大量採用へ
2月1日からデジタル庁は、「政府DX推進専門員」の中途採用を開始した。経済産業省や総務省、国土交通省といった中央省庁におけるクラウド化、DXを推進するためのポジションだとしている。とりわけ注目したいのがスキル要件だ。
これまで同庁における民間人材の採用においては、ITに係る高度な専門スキルを要求するものが多く見受けられた。しかし、今回の要件を見てみると下記のように少し毛色が異なる人材を求めていることがわかる。
必須スキル
- 事業会社での社内IT職のご経験、またはコンサル会社/SIer等で顧客の社内システム構築に携わったご経験
- 10名以上程度の利害関係者と関わりながら、自分のミッションを遂行したご経験
歓迎スキル
- プロジェクトマネジメント等で、業務管理や人の管理を行なったご経験
- ITのガバナンスや監査等に携わったご経験
- クラウドサービス、SaaSサービス等に携わったご経験(開発側、ユーザー側いずれも可)
デジタル庁 シニアエキスパートとして人材採用を担当している齋藤正樹氏は、「これまでは、特定分野の開発ユニットを作り上げるといった組織コンセプトの下で、主にスペシャリスト採用を進めていました。現在は組織も大きくなり、中央省庁のDXを推進していくため、“ITゼネラリスト”のような人材が必要になっています」と述べる。つまり、カオスティックな立ち上げ期の中で組織を設計し、けん引していけるような人材だけでなく、情シスやSE、ITコンサルタントなどの経験をもつ“一般的なIT人材”が活躍できるだけの土台が整備されてきたということだ。

なお、取材時点で約800名規模にまで組織を拡大しており、引き続き高度専門人材の募集も行われている。中央省庁との各プロジェクトも進行しており、タスクベースでの業務もより増えているなどデジタル庁だけでなく各省庁内で手を動かして実働できる人材のニーズが増しているのだ。
「ガバメントソリューションサービス(GSS)やガバメントクラウドなどを全省庁に展開していくための“実行力”が必要です」と説明するのは、楽天インシュアランスホールディングスで執行役員を務め、現在は省庁業務サービスグループ 審議官に就いている早瀬千善氏。カオスティックな状況を開拓する“個の力”から、プロジェクトを推し進めるための“チームの力”を強化する方針だと言う。
今回は、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)やシステム開発における上流工程に携わっていた経験を持つ人材をはじめ、社内情シスとして従事してきた、SIやITコンサルティングをやっていたというような、いわゆる“ITを主とした”業務に携わってきたバックグラウンドを持つ人材を幅広く、100名から200名規模で採用する見込みだ。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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