変革期を迎えたSAS
これまでSASは「SAS Global Forum」として年次イベントを開催してきたが、Innovateはユーザー層を経営層やビジネスユーザーに特化したイベントという位置付けとなる(データサイエンティストや技術者向けには「SAS Explore」を開催する)。今回のSAS Innovateはグローバルで初のリアル開催となり、1000人以上が登録した。
AIの利用が急速に進みつつある中、1976年の設立以来アナリティクスを生業としてきたのがSASだ。そのSASが変化の時期を迎えている。
製品では、AIとクラウドの時代に向けて、2016年にAIとアナリティクスのプラットフォーム「SAS Viya」を発表、従来の「SAS 9」からの移行を進めている。
組織面では、2024年までにIPOを行う計画を明らかにしている。学生時代の研究から起業して以来、CEOとして同社を率いてきたのがGoodnight博士。創業来毎年黒字という偉業を成し遂げるなど、技術だけでなく経営者としての手腕も知られている。転職が頻繁におこる米国において、SASは従業員が働きやすい企業としても知られているが、5月に入り一部の米国外のオフィスを閉鎖することも明らかになった。
「SASとはどのような企業か、市場におけるSASの価値は何か?」とHarris氏は自問しながら、「SASは、クラウドネイティブのAIとアナリティクスのカンパニーだ」と言い切る。主力製品となるViyaは、「市場において、最も高速で、生産性が高いAIとアナリティクスのプラットフォームだ。クラウドでも、オンプレミスでも、エッジでも、顧客が必要とするところで動く」という。
「SAS Viya」の今後の展開
変化の激しい現在こそ、Viyaを活用する意味がある、とGoodnight博士は話す。「スピードとアジリティを持って事業運営する必要がある。そのためには、データとモデルを最大限に活用するテクノロジーが必要だ」とGoodnight博士、「(Viyaは)さまざまな言語に対応しており、あらゆるスキルのユーザーが、自分に必要な答えを得られる。企業は投資も保護できる」と価値を説明した。
Viyaの業界別ソリューションに3年で10億ドルを投資
そのViyaを土台とした業界別ソリューションを、今後3年で10億ドルを投じて開発することも発表した。金融、ヘルスケア、製造などの業界で養った専門知識を活かし、「データサイエンティストがいなくても容易にアナリティクスとAIを活用できるようにする」とGoodnight博士。
Microsoftと連携しジェネレーティブAIとの統合も
なお、Goodnight博士とHarris氏は、話題の「ChatGPT」(OpenAIが開発するジェネレーティブAI)にも触れた。ChatGPTが出す答えは「完璧ではない」としながらも、「ジェネレーティブAIは将来の技術において一定の役割を果たすことになる。我々はMicrosoftと提携しており、ユースケースやジェネレーティブAIの統合について可能性を模索している」とGoodnight博士。これを、「責任のある方法で行う」「46年にわたって構築した顧客との信頼関係を強化する」と約束した。