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長年のベンダーロックインで“鎖国”状態に……セブン-イレブンがデータ基盤の構築で取り戻した「主体性」

すべてのパートナー企業と“コワーク”できる体制に一新

 創業50年目を迎えたセブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)。全国約2万1,000店、1日2000万人が来店する日本最大のコンビニエンスストアチェーンに成長した背景には、経営哲学である「変化対応」に加え、1980年代から当時の先端ITを採用し、世界に先駆けシステム化を進めてきた歴史がある。だが、ここにも「2025年の崖」が迫る。巨大化したシステムの老朽化・複雑化に加え、特定のベンダーへの依存が進み、自分たちの意思で新たな施策やコスト削減ができない状態に陥っていたのだ。セブン-イレブンは今、Google Cloudをはじめとするクラウドサービスを中心にIT基盤の刷新に取り組んでいる。執行役員 システム本部長の西村出氏に話を聞いた。

DXの第一歩は、ベンダーロックインからの脱却

 西村氏がシステム本部長として最初に取り組んだのは、パートナー企業との関係性の再構築だったという。

 もともと西村氏は、取引先のグループから2014年にセブン-イレブンに出向していたが、2019年に同社に入社。翌年にシステム本部長に就任した。2014年といえば、国内のエンタープライズでも徐々にクラウドの利用が増えてきた頃だが、当時の同社ではクラウドの活用は視野に入れていなかったという。

 2015年、グローバル化を見据え、店舗のマニュアルを電子化する検討が始まった。西村氏は、Google Cloud環境に電子マニュアルを置いて、店舗の端末から閲覧できるようにしたいと提案するも、思わぬ“抵抗勢力”に遭遇したと振り返る。

 「クラウドはまだ安全とは言い切れません。セブン-イレブンの大切な業務ノウハウを流出させてしまう可能性があります」。そう強い懸念を示したのは、社内ではなく、長年付き合いのある既存のパートナー企業だった。

 「そのとき、パートナー企業の方がふと『鎖国下の侍』のように見えたんです。黒船が来航したとき、侍は日本を守ろうと刀で戦いを挑んだと聞いています。これは象徴的な逸話かもしれませんが、パートナー企業もセブン-イレブンを守りたいという気持ちは本物だと感じる一方で、その気持ちに甘えていては、いつまでたっても新しい技術に挑戦できない。私たち自身が強い意志で舵を切らないと何も進まないと確信しました」

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セブン-イレブン・ジャパン 執行役員 システム本部長 西村出氏

 そもそもなぜ、セブン-イレブンと既存のパートナー企業は新技術に挑戦しにくい関係に陥ってしまったのか──。西村氏は、「社内に専門知識を持ったエンジニアが少なく、さらにはパートナー特有の技術を使っていてブラックボックス化していました。そのため、ビジネス要件だけパートナー企業に伝え、あとはよろしくという状態が続いてしまっていたのです」と振り返る。必然的にパートナー企業は数社に固定されてしまい、ベンダー間の競争原理が働く余地もなかった。

 かたやパートナー企業も顧客のシステムで大きなミスは避けたい。現状のシステムありきで新たな提案を持ち込みにくい、守りの体制ができあがってしまっていたのだ。

 ベンダーロックインから脱却するには、ベンダーを変えるという手もある。だが、西村氏が選んだのは、既存のパートナー企業に問題意識を伝え、自社とパートナー企業の双方で意識改革を行い、再スタートを切ることだった。同時に、クラウドに強いパートナー企業も迎え入れ、セブン-イレブンとすべてのパートナー企業が“コワーク”できる体制に組み直した。

 こうしてセブン-イレブンは、Google Cloudを中心に、すべてのシステムをクラウドへシフトしていくことになった。

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「セブンセントラル」でリアルタイムなデータ活用を実現

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この記事の著者

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

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