SAPはビジネスのためのAI機能を15種類追加
SAPが提供しているのは「ビジネスのためのAI」で、汎用的なAIとは異なるものだ。Sandhu氏が顧客との対話を繰り返す中、AIやデータアナリティクスに関する組織の最大の悩みは、取り組みをスケールさせるだけの組織体制が整っていないことにあるとわかってきた。具体的にはデータサイエンスチームがない。あっても小規模なものにとどまるなどだ。これではPoC(Proof of Concept)から全社へと適用範囲を拡大していくことは難しい。そこで顧客自身でソリューション開発に時間をかけなくてもいいように、SAPはアプリケーション製品にAIを機能として組み込むことにした。
SAPは、これまでの50年間でファイナンスから始まり、人事、調達、サプライチェーンに至るまで、企業のビジネスシステムを支援してきた。その経験を通して蓄積してきた知識への自信を示しつつ、Sandhu氏は「私たちのAIへのアプローチは、MicrosoftやGoogleのような他社のものであれ、オープンソースのものであれ、最高水準のテクノロジーにSAPが蓄積してきたビジネスドメインの知識を組み合わせ、すぐに使えるキュレーション済みのソリューションとして、アプリケーションに組み込んで提供するものです」と説明した。
5月に行われた「SAP Sapphire 2023」では、SAPは新しく15のAI機能を発表した。その中には一般的な機械学習のモデルを組み込んだ機能もあれば、ジェネレーティブAIのテクノロジーを取り入れた機能もある。前者の代表例がファイナンス部門向けに提供されるIntelligent Collections機能で、回収業務の担当者が請求書の支払い遅延のリスクを予測し、フォローアップが必要な顧客についての示唆を提供する機能になる。また、後者の例としては、2022年7月にSAPが買収した伊AskdataのNLP(自然言語処理)テクノロジーをSAP Analytics Cloudに実装したNatural Language Queries機能がある。この機能を使うことで、ビジネスユーザーはデータソースに対して質問を投げかけることで、セルフサービスBIとは違った方法で、求める情報を入手できることになる。
この他、図1ではSAPが提供するアプリケーション製品に組み込まれる予定のAI機能の全体像が公開された。基本的には特定の部門向けの機能がマッピングされているが、SAP Analytics CloudやSAP Signavio Process Managerに組み込まれたもののように、組織全般で利用するAI機能もある。