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「離島から地域を元気に」 長崎県・対馬でCATVネットワークを活用し課題解決に取り組む


 長崎県の対馬にある株式会社コミュニティメディアでは、CATVのネットワークを利用して、放送事業、地域情報化システム、映像コンテンツ事業、プロバイダーやデータセンターサービスを提供するインターネット事業など幅広い事業を展開している。離島から実践するコミュニティメディアの取り組みを紹介する。

艦船の防衛技術を活かし事故対応できるCATVのネットワーク

 玄界灘の真ん中に位置する長崎県の対馬。長崎よりもむしろ福岡に近く、さらに九州よりも朝鮮半島までのほうが距離は短い。地理的な特性から、対馬は国境の島として古くから大陸との交流、交易の場として機能してきた。対馬の大きさは約700キロ平米で89%が山林だ。南北82キロメートル、東西18キロメートルとかなり細長い形をしている。人口は2万7000人余りで、世帯数は1万4512なので1人世帯も多く高齢化も進んでいる。以前、対馬島内は6町に分かれていた。各町では人口も減り、公共サービスなどを町単位では対応しきれないなどの問題もあった。そのため平成の大合併のタイミング6町が合併し、2004年3月に新たに対馬市が誕生する。

 合併タイミングで、各町の集落毎にあった数多くのケーブルテレビの組合組織を統合し、市営化する。統合化された新たな対馬市CATVでは、3年以上の時間をかけ全島に光ファイバー網を整備した。このケーブルテレビの運営を支えると共に、離島からICTで地域を元気にしようと取り組んでいるのが、株式会社コミュニティメディアだ。

 コミュニティメディアの創業は2007年10月。長崎県長崎市の出島にある産官学連携インキュベーション施設の最初の入居者だった。2008年には対馬メディアセンターを開設し、対馬市CATVの指定管理者として島のケーブルテレビ運営に携わる。同社の創業者で代表取締役の米田利己氏は対馬出身だ。同社を創業する前は大手電機メーカーのエンジニアとして、防衛庁(現防衛省)の艦船の情報システム構築などに携わってきた。

 「艦船の中には、1つの街と同じような仕組みがあります」と米田氏。艦船の情報システムが接続するネットワークは、船内で完結する必要がある。その上で可用性を確保するため、何らかトラブルが発生しても適宜代替経路を取ることで、接続が切れる範囲を最小化する工夫もなされている。対馬のような離島のネットワークインフラも、このような艦船と同様なアーキテクチャで構築する必要があったと米田氏は言う。

 対馬は台風の通り道になることも多く、自然災害による停電やファイバーケーブルの切断など、避けられないトラブルが発生する。そのため対馬という大きな島の中でネットワークを二重ループにし、どこかが切れてもループバックして接続できない地域が発生しないような構成にしたのだ。

 この対馬市CATVのネットワークは、ケーブルテレビのTVサービスのインフラとしての利用だけではない。島内加入者間で利用できるIP電話でも利用されている。IP電話は島内の全戸で使われ、無償で提供されている。また、IP電話用に配られている端末はIP告知放送にも利用される。消防署や市役所、区長などからの音声放送を、加入者宅のIP告知端末機内蔵のスピーカーで聞けるようになっているのだ。

 このネットワークと各戸に配布している端末を利用し、インターネット接続サービスも展開している。つまりケーブルテレビのネットワークは、島での生活を支える重要な通信インフラの役割も担っているのだ。2009年には島内のネットワークインフラを活用する「地域見守り支援サービス」が、経済産業省の構築実証事業にも採択された。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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