本論では、現在の運用管理の問題から今後のシステム運用に求められること、およびその対応アプローチについて概説していく。
運用管理の世界がめまぐるしく変化している。以前できていたことが、できていない現状にマネジメント層はもどかしさを感じているのではないだろうか。そもそもシステム運用は、企業のビジネスに大きく貢献するものであるにも関わらず、開発するものへの投資とは逆に軽視されていることも事実で、そこで働く人達のモチベーションを奪っているようにも見えるのが最近の印象である。そこで本論では、現在の運用管理の問題から今後のシステム運用に求められること、およびその対応アプローチについて概説していく。
システムの変遷と運用管理
メインフレームがシステムの中心のころは、必ずと言っていいほど企業内のキャリアパスの中に運用(オペレーション)があり、それを3年程度経験してから企画・開発・運用などの道へ進んでいた
ものだ。最近の分散系オープンシステムが中心の時代では、作業の役割が分離することにより、運用を経験した人が開発を行なうなどのキャリアパスが崩壊してしまい、運用は運用、開発は開発のようにそれぞれが専任化してしまっていることがほとんどである。また運用の範囲もメインフレーム全盛時のように、いわゆる運用管理・保守・監視といった広い範囲ではなく、主に監視だけがメインになり、その業務範囲も狭く、せっかく得られていたビジネスやシステムのノウハウが蓄積されなくなってしまっている(図1)。
そのため、現在は、運用時のことを想定できないままシステム設計や構築を行なってしまうことや、カットオーバーの日程を一番に重視するため、運用のことは後まわしにしてユーザー開放してしまっていることが多い。これは標準的なシステム構築(運用設計)の規準がないまま新しい技術を取り込んでしまったり、ある程度の手作業や人手による判断は仕方がないと割り切ってしまうことで、その後、運用サイドに引き継ぎができず、監視のみの引き継ぎで、構築メンバーがそのまま運用を行なうことになり、開発と運用が混在して混乱を招いている多くのケースである。
低コスト・短納期だからといってオープンシステムの仕組みを採用したり、オープンシステムにダウンサイジングすることが、本来のコスト削減に直接つながるのだろうか。確かに、システム(ハード)の維持費の面では下がったかも知れない。しかし、人材への業務負担が増し、また部分最適化からくる人材の専任化が必要となり、増員を行なうことが起こり、結果的にはコスト増を招いているケースもあるのではないだろか。
これは、バラバラなシステムができていることにより、バラバラな運用が乱立してしまった結果であり、統一的な運用設計のルールや標準化を進めなかったための非効率の表れであると言えよう。
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庄司 憲(ショウジ アキラ)
株式会社ビーエスピーソリューションズ 技術部 第二グループ マネージャ。運用ソフトウェア製品のサポートを経て、2003年ビーエスピーソリューションズに入社。システム運用領域の人材育成プログラム開発を担当。現在、ITIL®の考え方を取り入れた運用コンサルティングを中心に活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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