日立が逆輸入した新サービス「HARC」は新たな起爆剤となり得るか 競合他社にない“総合力”が鍵に
クラウドインフラの運用を継続的に改善、これまでの日立にはない画期的なサービスか

クラウドの利用が当たり前となり、マルチクラウドやハイブリッドクラウド構成も珍しくなくなった。しかしながら、それらの多くが最適化されている訳ではなく、まだ移行できていない環境が手元に残っていたり、吸収合併などで異なるクラウド環境を運用せざる得なかったりするケースもあるだろう。
日立が「HARC」で目指す、新領域での拡大
多くの企業が現状のクラウド利用が正解なのか、不安や懸念を抱えている。単に既存システムをクラウドリフトするに止まらず、クラウドネイティブ環境へとシフトし、しっかりと企業の経営戦略に貢献できる環境にしたいとも考えているだろう。クラウドを真に企業戦略に貢献できるようにする。そのための支援サービスとして日立製作所(以下、日立)は、新サービス「Hitachi Application Reliability Centers(HARC)」を立ち上げた。
HARCは、システム運用の自動化を推進する「SRE(Site Reliability Engineering)」の手法に基づき、俊敏性と信頼性の両立やセキュリティの強化、クラウドコストの最適化を図るためのサービスだ。元々、日立の米国子会社である日立ヴァンタラが北米などを中心に展開しているサービスであり、日本市場でも2023年6月から提供を開始した。
日本においてHARCを担当する日立 マネージドサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルサービス部 担当部長の酒井宏昌氏は、元々同社でグローバル市場に関わる仕事に長く携わってきた経験を持つ人物。日立ヴァンタラとの窓口を担当していた頃から、HARCのビジネスニーズはむしろ日本市場にこそあることを感じていたという。

そもそも日立ヴァンタラには、同社CEOのガジェン・カンディア氏を始めとして、コンサルティングや情報技術、ビジネスプロセスアウトソーシングの分野で世界をリードするITプロバイダーである、コグニザント(Cognizant)でコンサルティングサービスを経験してきたメンバーが多い。そして、コグニザントのようにグローバルビジネスを拡大しているコンサルティングサービス企業では、メンバーの多くが世界中のさまざまクライアント企業のビジネス現場にいる。そこで直面している課題をクラウドなどのデジタル技術を活用し、解決してきた実績やノウハウがあるというわけだ。
そのグローバルでの豊富な経験の中で、「北米だけでなくAPAC地域を含め、ITシステムの運用における共通課題があり、そこを改善する余地があると日立ヴァンタラでは考えていました」と酒井氏。同社では、3年ほどITシステム運用を改善するビジネスに取り組み、1年半ほど前にそれをHARCという体系でサービス化した。酒井氏は日本でもいち早くHARCを展開したいと考えていた一方で、日本市場への投入に際しては調整が必要となり、結果的に今回のタイミングでのリリースになったと話す。
また、日本市場への展開前、いくつかの国内顧客企業にHARCについてヒアリングをした際には、顧客から「このサービスには、絶対にニーズがある」と言われたことを振り返る。「HARCについて説明したところ『自社でこれをメニュー化したい』とまで言っていただいた顧客もあり、市場参入に時間はかかりましたが自信をもっています」とも言う。これまでの日立が展開してきたサービス群を見てみても、クラウドネイティブ技術を活用するようなインフラ基盤構築に係わるコンサルティングから運用までをカバーしたものはない。外資のコンサルティング会社などに一部領域が被る競合他社は日本市場にも存在するが、日立独自の新しいサービスとして競争力があり、十分にキャッチアップできると酒井氏は自信を見せる。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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