生成AIの経営活用の可能性は未知数
ChatGPTのような生成AIの導入が企業セクターで急速に高まっていることは周知の事実だ。現在のところ、企業での導入分野として、クリエイティブ、カスタマーサポート、マーケティング、プログラム開発などの分野で顕著に進展しており、その応用範囲はまだその先へと広がりつつある。
企業経営の最前線でのAIの応用は、ERP(Enterprise Resource Planning)などのミッションクリティカルな分野にまで広がりつつある。すでにMicrosoft、GoogleなどのAIの中心的企業だけでなく、Salesforce、SAP、Oracleなどの主要エンタープライズ系企業は、生成AIの自社プラットフォームへの導入の発表を終えている。こうした企業は、従来のデータ活用の仕組みと生成AIを連携させることで、新しいビジネスを創出しようとしている。
一方、慎重な態度をとる企業もまだ多い。財務会計や経営戦略の分野では、この技術の採用は未知数であり、多くの疑問と懸念が存在するからだ。
最も重要なのは、生成AIによって処理されるデータの信頼性だ。よく言われるように「ChatGPTは嘘をつく」というハルシネーションの問題である。不完全または不正確なデータは、誤った分析と結論につながる可能性がある。回避するためには、生成AIに取り込むデータの品質と正確性が求められる。
もう1つが、セキュリティとプライバシーである。社内データの取り扱いには厳格なセキュリティとプライバシーの規制が求められる場合が多く、これらの観点からも生成AIの利用は慎重に進めるべきという意見が生じるところだ。
さらに、透明性と説明可能性の課題もある。 生成AIのアルゴリズムがどのように動作するのか、その結果がどう導かれたのかを明確に理解し、関係者に説明する能力は、信頼性の確保に不可欠となる。生成AIの潜在能力を発揮し、企業経営のレベルで活用するためにはこうした課題への対応が必要だ。
生成AIを企業で最大限活用するための条件
「現在のようなChatGPTの使い方ではもったいない。生成AIは企業変革のツールにもなりうるのです」と語るのは、アクセンチュア AIセンター長 執行役員 保科学世氏だ。各社、試行錯誤で使い始めたが、本当のLLMの力を使いこなせていないと保科氏は言う。「AI Hubプラットフォーム」は、現在の生成AIの課題に対応するための、エンタープライズ向けのAI活用基盤だ。その特長は以下の4つである。
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複数のAIエンジンの良いところを組み合わせる
生成AIの技術は革新的な一方、数字の予測や最適化計算が得意な訳ではない。得意領域に合わせ複数のAIを組み合わせて動作させることが肝要となる。 -
社内外のシステム・データを組み合わせて業務を遂行
業務を遂行するためには、RPAなど既存の自動化の仕組みとも連携する必要がある。ChatGPTはネット上の一般知識しか知らない。社内の業務データを最大限活用できる仕組みが必要となる。 -
AIエンジンの進化に応じて自在に着脱
ChatGPTのような衝撃的なAIが出て来たが、今ベストと思って選定したAIが1年後にもベストなAIとは限らない。AIを簡易に切り替え可能とする仕組みがこれまで以上に重要。 -
独自進化できるAIこそが競争優位の源泉
ChatGPTを活用している限り、独自の優位性は出てこない。企業独自にAIを育てる仕組みこそが、競争優位につながる。企業毎に進化可能な仕組みを提供する。