RPAとは? マクロやAIとの違い、ツールを選ぶポイントを解説
RPAはRobotic Process Automationの略で、PCで行う事務作業を自動化する技術のことです。導入することで業務効率化や生産性向上、人件費の削減を実現するとして注目されており、世界的にも導入する企業が増えています。
しかし、RPAについて漠然と「便利そう」とは思っても、導入することでどれだけのメリットがあるのか、マクロやAIとどう違うのかなど、よくわからないことも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、RPAの概要や導入のメリット・デメリット、RPAツールを選ぶ際のポイントなどを紹介します。
RPAは作業を自動化する技術
RPAは、PC上で行う業務を自動化する技術で、マウス操作やキーボード入力などの操作手順を記録すると、それを高速で実行します。自動化できるのは問い合わせメールの転記、勤怠データの集計、請求書発行といった単純な定型業務です。
自動化というと、ExcelのマクロやAIなどでも可能ですが、RPAとそれらはどのように違うのでしょうか。
RPAとマクロの違い
マクロは複数の操作をまとめて自動化する機能で、主にExcelの操作で利用されます。行われた操作をVBA(Visual Basic for Applications)というプログラミング言語に変換して記録し、何度も繰り返し再現することが可能です。
マクロは、Google スプレッドシートやGoogle ドキュメントでも利用でき、その場合はGAS(Google Apps Script)という言語が使用されています。
RPAとマクロの大きな違いは、マクロは対応するアプリケーションが限定的だという点です。たとえば、MicrosoftのアプリケーションとGoogleのアプリケーションをまたいだ操作はできません。PC上で行うほとんどの操作を自動化できるRPAに対し、自動化の範囲は限られています。
また、マクロで複雑な操作を自動化したい場合は、VBAやGASのスキルが必要です。プログラミングの知識がなくても利用できるRPAとは、この点も違うと言えます。
RPAとAIの違い
AI(Artificial Intelligence)は人間と同じように記憶や判断、学習ができ、人間の脳と同じような働きが見られるため「人工知能」と呼ばれます。収集したデータをもとに繰り返し学習することで、自ら判断の精度を向上させられるのが特徴です。
RPAとAIの大きな違いは、RPAは単純作業を正確に実施できること、AIは判断をある程度代替できることでしょう。RPAは人間が設定したルールに従って作業を行うものであるのに対し、AIは人間に代わって自立して判断を行うことが可能です。
最近では、互いの長所・短所を補うため、RPAとAIを連携させたツールも誕生しています。
RPAツール:大きく3つのタイプ
一口にRPAツールといっても、「デスクトップ型」「サーバー型」「クラウド型」と、タイプはさまざまです。ここでは、RPAツールの各タイプの特徴をご紹介します。
デスクトップ型
デスクトップ型のRPAツールは、インストールしたPCでしか使うことはできません。デスクトップ型には、初期費用が低めなので導入しやすいというメリットがありますが、自動化の範囲を広げる場合はサーバー型やクラウド型への切り替えが必要となり、かえって費用がかかる可能性があります。
定型業務があまりない、まずは小さい範囲で自動化したいという企業に向いているでしょう。
サーバー型
サーバー型は、自社サーバーにインストールして利用するRPAツールです。サーバーから各PCに配布され、横断的に業務管理できます。
初期費用が高く、各PCの設定が必要なために運用まで時間が必要ですが、定型業務が多く大規模にRPAを運用したい企業に向いています。
クラウド型
クラウド型はオンラインで利用するRPAツールです。導入のコストや時間がかからず気軽に利用できますが、大規模利用の場合は運用コストが高くなることもあります。
まずは小規模から利用したい、うまくいけば拡大したいなどと考えている企業は、クラウド型が向いているでしょう。
RPAツール導入のメリット
RPAツールは定型業務を自動化できますが、具体的にどのような効果があるのでしょうか。ここでは、RPAツールを導入するメリットを紹介します。
手作業を削減し、業務を効率化する
業務には誰にでもできる単純作業と、付加価値の高い作業があります。単純作業をRPAツールに代行させることで、自動化ができない高付加価値な業務に取り組めるようになるでしょう。削減した時間を本来の注力業務に費やすことで事業成長、従業員の能力開発などにもつながります。
コスト削減
人が行っていた作業をRPAツールによって自動化できれば、人件費の大幅な削減が見込めます。もちろん、どれだけ削減できるのかは行っていた定型作業の量や内容にもよれば、RPAツールの導入や運用にもコストはかかるでしょう。しかし、一般的に定型業務が多ければ多いほど、削減効果は高まるとされています。
作業ミスの軽減、業務精度向上
単純作業を繰り返し行っていると、どうしても集中力が落ちてミスが発生することがあります。RPAツールの場合は命令どおりに作業を実行するため、ミスがありません。ダブルチェックが必要なく、手戻りが発生しないことで業務スピードが向上するとともに、単純ミスなどをなくして業務精度を向上させられます。
業務時間の短縮、対応スピード向上
RPAツールを活用することで、手作業よりも早く処理ができる点もメリットです。処理スピードが速いだけでなく、24時間稼働させられるため、業務時間外でも働かせることができます。チェックや修正にかけていた時間が削減でき、単純作業に時間を取られて労働力が不足するといった課題も解決できるでしょう。
RPAツール導入の注意点
メリットの多いRPAツールですが、デメリットがないわけではありません。RPAツールのデメリットを回避するため、事前に考えておきたい注意点をご紹介します。
コストがかかる
RPAツールの導入には費用が発生します。初期費用や運用費用だけでなく、ツール選定やトライアルにかける時間、代行させる業務の洗い出し、指示書の策定といった人的コストがかかることにも注意が必要です。運用開始後は、定期的なメンテナンスを行うコストがかかることも考えておかなければなりません。
導入の目的や期待する効果などが不明確なまま闇雲に導入すると、思ったような費用対効果が出ない可能性があることに注意してください。
業務改定の際の対応
RPAツールは一度作業を登録したら終わりではなく、業務内容が変わった、法改正で対応が必要などというときは、修正しなければなりません。修正を行わないと、RPAツールは間違った操作を続けてしまうため、大きなトラブルに発展する可能性があります。
修正やメンテナンスには業務の知識がある人、RPAの知識がある人が必要になるため、「そういった人材が確保できない」「RPAツールの管理が属人化してしまう」といった問題が生じることもあります。
トラブルが起きることも
RPAツールは、ブラウザやOSのバージョンアップで、トラブルが起きることがあります。一連の操作のどれかひとつが何らかの理由で終了できなくなると、規定の作業ができずにRPAがミスをすることもあります。
また、ネットワークにつながっているRPAツールであれば、不正アクセスされる可能性がゼロではなく、情報漏洩が起きないとも限りません。
RPAツールを選ぶ際のポイント
RPAツールにはさまざまな種類があり、何を基準に選ぶべきか迷ってしまうこともあるでしょう。最後に、RPAツールを選ぶ際のポイントをご紹介します。
自動化の効果はどのくらいか
どのような業務を自動化したいか、自動化した際の効果はどのくらいか、事前に考えておくべきです。それに見合ったコストのRPAツールでなければ、費用対効果が低いということになってしまいます。
導入前には、定型業務にどれくらいかかっているか、それを削減すると空いた時間でどのような業務ができるのかなどを事前に確認しておきましょう。
無料のトライアルと検証が可能か
使いやすさはRPAツールによって違います。一度操作してみないとわからないこともあるでしょう。費用や機能などである程度絞り込んだら、トライアル期間を利用して操作してみることをお勧めします。
実際に自動化が可能か、業務との相性はどうかといったことを確認し、ツールの特徴を把握してください。正式に導入する前の社内稟議でプレゼンする際にも役立ちます。
社内に知識のある人がいるか
RPAツールは導入して終わりではなく、業務内容が変更になったり、使用しているアプリケーションが変わったりして、修正が必要になることもあります。そのようなときに、社内でRPAに詳しい人がいないと、多少苦労することになるかもしれません。
管理が属人化することは避けたいですが、ある程度社内にRPAの知識がある人がいると安心です。
サポート体制はどうか
RPAツールの導入時はもちろん、運用を開始してからもトラブルが起きることはあります。そのようなときに、RPAツールを提供している企業のサポート体制がしっかりしていれば安心です。
どのようなサポートを受けられるか、メール以外でも対応してくれるかなど、実際にトラブルが起きたことを想定して考えてみてください。
RPAツールを利用して業務を効率化しよう
RPAツールは定型業務を登録しておくことで自動化し、代行してくれます。利用することで業務スピードの向上や作業ミスの軽減、人件費の削減など、さまざまな効果を得ることが可能です。
導入の際にはいくつか注意点もありますが、うまく活用することで付加価値の高い業務に集中でき、業務効率化を実現できるでしょう。