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Security Online Day 2023 秋の陣 レポート

「サイバーセキュリティ従事者はエッセンシャルワーカー」前デジタル大臣の牧島かれん氏が重要性を訴える

霞が関の「無謬性神話」からどう脱却を試みたのか、当時を振り返る

 設立から2年を迎えたデジタル庁。9月26日から27日にかけて開催した「Security Online Day 秋の陣」に第2代デジタル大臣の牧島かれん氏が登壇した。ノンフィクションライターの著者が、牧島氏の著書『日本はデジタル先進国になれるのか?』(日経BP)を参考に、この2年の成果とサイバーセキュリティに関する動きを聞いた。

変えることを恐れない霞が関へ 牧島氏が行った改革

 牧島氏がデジタル大臣兼サイバーセキュリティ担当大臣に就任したのは、デジタル庁が始まって1ヵ月後、2021年10月のことだ。「日本のデジタルの総司令塔として、新たな価値を生み出すために旗を振る」。牧島氏は、デジタル庁の役割をこう表現した。コロナ禍で広く国民が認識したデジタル化の必要性。どの自治体もまったくデジタル化を進めていなかったわけではない。優れた技術を有した民間企業も数多く存在する。ただ、それらがバラバラに動き、うまく連携できていなかった。

 筆者は、2022年2月、当時行政改革大臣でもあった牧島氏が、柔軟な政策の見直し・改善を行っていく「アジャイル型政策形成・評価の在り方に関するワーキンググループ」を立ち上げ、「無謬(むびゅう)性神話からの脱却」を訴えたことが印象に残っている。無謬とは、理論や判断に間違いがないことを指す。日本の行政には、無意識のうちにこの無謬性神話に取り憑かれている人が多いという。

 「『絶対に間違えてはならない』というプレッシャーで硬直し、前例踏襲主義から抜け出せないのがこれまでの行政でした。しかし、生成AIなどまさにそうですが、つい先週話題となった技術が、今週にはもうアップデートされている。そんな時代に、昨年と来年が同じ判断でいいはずがありません。社会の変化を柔軟に取り入れていかないと、現実と行政の動きが噛み合わなくなってしまいます。私たちはむしろ、このことを恐れなければなりません」(牧島氏)

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ノンフィクションライター 酒井真弓氏

 だが、霞が関の文化は一朝一夕に変えられるものではない。従来の行政に突然アジャイルを投入しても「優柔不断」「朝令暮改」と批判されるだろう。政策を柔軟に見直すには、納得のいくデータやエビデンスが必要だ。牧島氏は、「これまでの知識や経験だけに頼らない、EBPM(証拠に基づく政策立案)の考え方を根付かせる必要があった」と語る。

 加えて牧島氏は、人事院総裁を含む三大臣会合で話し合い、新たな挑戦を是とする評価制度改革を進めた。いくら挑戦を促しても、評価がついてこなければ優先順位は上がらない。「社会の変化にしっかり適応し、よくやった」と正当に評価することが、変化を後押しするのだ。

 「今では若手官僚を中心に、先輩たちが築き上げてきた政策を実情に則したものに変えようという提言が盛んに行われています。特に、AIやWeb3といった先端技術に関する政策は、若手や専門人材がリバースメンターの役割を果たすケースも増えています」(牧島氏)

 牧島氏が今のデジタル庁に期待することは大きく2つ。1つは、行政サービスにおけるUI/UXの向上。2つ目は、平時はもちろん有事にも耐えうるデジタル基盤を整備することだ。これにはクラウドの活用が欠かせない。

 「デジタル庁では現在、クラウドのメリットを最大限活かすことで、迅速かつ柔軟性の高いシステムの構築と、利便性の高いサービスの提供を目指しています。クラウド上にデータがあれば、有事の際にも職員が役場の外から対応できるようになります。こうした世界を目指すべきだと思います」(牧島氏)

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

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