「コンテンツも“重要な情報リソース”である」という考え方
「DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するためには、何から取り組めば良いのか」。こうした質問を聞いたとき、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
これまで物理的に行っていた様々な「企業や組織の営み」をデジタル化し、データによる再現が可能な世界「デジタルツイン」を構築する。「データレイク」を構築し、アナリティクスを日常化することで「データドリブン経営」を実現する。蓄積したデータ自体が「価値ある情報」になることで、新たなビジネスを生み出していく。企業や組織が持つ価値あるデータをAPIでつなぎ合わせることで、これまで考えられなかったような革新的なビジネスプロセスを描き、新たなビジネス機会とする……このような回答を想像された方が、多いのではないでしょうか。
言うなれば、“DXの主役はデータである”ということであり、もう少し解像度を上げるならば、それはコンピューターが処理できる形の「構造化データ」を指しています。このとき「非構造化データ」であるコンテンツは、“DXにおいては主役ではなく脇役”と捉えられがちです。
しかし、図1にあるような観点を考慮すれば、コンテンツも主役級に据えるべき重要な情報リソースと言えるのではないでしょうか。
データドリブン経営と言っても、経営者が生データを見て物事を判断し、意思決定するわけではありません。あくまでも構造化データをBIツールなどで可視化し、「レポート」という“コンテンツにまとめられた情報”を見て、経営判断を下すわけです。アナリティクスにおいても同様です。もちろん、売上データの分析から客観的な気づきを得ることは重要ですが、「その商品が売れたとき、または売れなかったときの店内の様子を確認したい」「店舗を管轄するスーパーバイザーと店長との間でどのような会話がなされていたのか知りたい」といったときに頼りたい情報源は、店内映像や店舗巡回報告書といったコンテンツです。
データ分析による予測は、過去の延長線上にある未来でしかないのですが、自身の目で確かめて得られる主観的なインサイトやワイルド・アイデアは、ときに過去に囚われない非連続のイノベーションを起こす可能性を持ちます。「ビジネスプロセス革新(Business Process Innovation)」の分野でも同様に、APIによるデータ連携は欠かせない一方、プロセス上に必ず人間も登場します。そして、人間同士で交わされる情報はやはり、構造化データではなく資料や文書といったコンテンツなのです。
連載Vol.1『コンテンツ管理とは?』で紹介したように、企業や組織が持つ情報の大半[1]は「非構造化データ(コンテンツ)」であり、これらのすべてを構造化データに変換することは現実的ではありません。そうした観点からも、DXを進めるにあたってはデータ基盤やデータレイクを整備するだけでは不十分であり、コンテンツ基盤やコンテンツレイクの構築も同時に検討する必要があると言えるでしょう。