Salesforce Data Cloudとは?
Salesforce Data Cloud(以降、Data Cloud)は、Salesforce製品体系に組み込まれたハイパースケールデータプラットフォームである。「Dreamforce 2022」で発表して以来、セールスフォースはData Cloudの製品強化に取り組んできた。Data Cloudの役割は、Salesforceと Salesforce外のデータを強固に統合することで、最大の特徴は、「業務の流れの中でETLなしで、Salesforce外にあるデータレイクやデータウェアハウスにアクセスできることにある」とブラッドレー・ライト氏は説明した。
先行的にData Cloudを利用する企業の中には、大きな成果を挙げたところも出てきた。その内の1社であるブラジルのデジタル銀行Interでは、クロスセルとアップセルの精度を高めるためにData Cloudを採用し、マーケティングキャンペーンのROIが従来比で20倍の成果を得た。また、世界有数のレーシングブランドとして知られる Formula One は、Data Cloudをファンプロファイルの充実に利用し、アプリトラフィックを60倍増加させた。
統合データモデルのハーモナイズとAIグラウンディング
Data Cloudの仕組みを簡単に説明する。使い方は、組織内にある様々なデータソースに接続し、データをData Cloudに取り込むことから始まる。データソースの中には、Sales CloudやService Cloudなど、セールスフォースが提供するアプリケーションもあれば、Google BigQueryのようなクラウドストレージ内のデータやSnowflakeのようなデータレイク内のデータもある。次に、取り込んだデータをビジネス的に意味のある「統合データモデル」にハーモナイズさせる。できた統合データモデルは、信頼できる唯一の情報源(SSOT)として、Salesforceアプリケーション上で様々なユースケースに利用できるようになる。そのユースケースの1つが生成AIの「AIグラウンディング」である(図1)。
例えば、営業担当者がSales Cloud上でメールの文案を作ろうとしたとする。プロンプトに「アプローチメールを書いてください」と依頼しただけでは、送りたい相手の情報も入っていなければ、自分たちの情報も入っていない文案にしかならない。ところが、Data Cloudを利用すると、鈴木さんというアプローチしたい相手の状況を加味した文面を作ってくれる。その内容は相手から返事がもらえそうなほどの質だ。これができるのは、Data CloudがAIファーストのPaaS「Einstein 1 Platform」上で稼働しており、LLMが鈴木さんに関するSalesforce内のデータとSalesforce外のデータを統合した顧客プロファイルに動的にグラウンディングできるためだ。