
世界的なクラウドシフトの潮流の中、データインフラの需要が高まりつつある。そうした中、長年日本のITインフラを支えてきた日立製作所では、データインフラに関する事業開発・研究開発・生産を担ってきたITプロダクツ事業部門を、2024年4月1日付けで新設する日立ヴァンタラ株式会社へ移行する予定だ。今後は海外部門のHitachi Vantara LLCと一体となり、オンプレとクラウドを組合わせたハイブリッドクラウドストレージを海外へ展開していくことになる。海外進出で苦戦する日本のIT企業が多い中、日立製作所はITインフラ分野で今後どう世界と戦っていくのか。そこで、世界のIT市場最前線であるAWS re:Invent2023に出展した日立製作所から、新会社日立ヴァンタラの新社長に就任予定である島田朗伸氏に、新会社設立の背景とこれからの展望について取材した。
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信頼性こそ、日立の強み
──新会社設立は海外での事業を見据えたものとのことですが、特にどういった点を海外にアピールしていくのか教えてください
弊社が海外に進出するにあたってこだわる部分としては、やはり“データをしっかり最後まで守る”という点です。特にクラウドなどは、ネットワークが不安定になったり止まったりするリスクがあります。そういった際に、“データを壊さない”という部分には特に気を使った設計をしています。

これはITインフラとしてなかなか注目されにくい、かつ目に見えない部分でもあります。しかし「何か壊れた際にきちんと手元にデータが残る」といったように、ハードウェアに対する信頼性は他社と圧倒的に違う弊社の強みだと考えています。
今回の展示の一つであるハイブリッドクラウドのデータプラットフォーム「Hitachi Virtual Storage Platform One(VSP One)」は現状まだ初期段階ではあるものの、日本を含め海外ユーザーの方々にもテストとして使っていただき、評価いただいている状況です。業界としてはやはり、金融系の方々が多いですね。

なお国内外の売上比率では海外が特に多く、おおむね6~7割ほどは海外からの売り上げとなっています。国内だけでなく、海外でも「とにかく壊れない」という、レジリエンスといった観点から評価をいただいております。もちろん、万が一何かトラブルがあった際にサポートを含めてそれをリカバリーできる部分も、国内外から好評いただいている要因ですね。
ただ課題としては、まだまだ海外では知る人ぞ知るというような状況です。事業としてはそれなりのビジネスになってはいるものの、ここからさらに大きく伸ばすという意味で、より多くの人々に我々のソリューションを知ってもらい、使っていただくことを目標にしています。ゆえに、今回出展したAWS re:Inventは例年よりも規模を大きくしました。出展自体は毎年行っているのですが、規模大きくした理由というのも、まさに弊社の知名度を上げるためです。
──海外で展示する中で、日本のIT技術の立ち位置というものは感じられていますか
展示を通してもそうですし、私自身が海外の技術者と一緒に仕事をする中で、日本のIT技術の良さは改めて感じています。ハードウェアやそれらに関連するようなソフトウェアをうまく連携させた物作りをする姿勢というのは、日本の技術者が特に優れている部分だと感じています。そしてそういった強みを、もっとPRしていくべきだと改めて感じています。
日本人は当たり前だと思ってるレベルが、実は海外だとプレミアムで差別化になる。こういった点は、意外と盲点だったりしますね。
ただ結局のところは技術的要素での争いになるため、いち早く新しい技術を世の中にアピールしていく必要があります。そういう意味で、やはりスピード感という面では海外のベンダーを見習わなければなりません。
さらに言えば、たとえ良い技術を持っていたとしても、一歩踏み出して海外へ打って出なければ世界の市場のニーズ、そこにいるお客様たちがどういった事業をやろうとしてるのかわかりません。ですので、こうした「そこにしかないもの」を得るには、やはりまずは打って出て、そこから色々フィードバックを受けた上で新しい製品につなげるサイクルにしなければなりません。
今回、弊社のデータインフラに関する事業開発・研究開発・生産を担ってきたITプロダクツ事業部門を日立ヴァンタラに一体化したのも、国内にいる社員が海外の技術者やお客様と直に触れ、海外の声を直接聞けるようにすることが重要だと考えているからです。
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