ガートナージャパン (以下、Gartner)は、2024年にテクノロジ・プロバイダーに影響を及ぼすトップトレンドを発表した(グローバルでは2月5日に発表)。
同社マネージングバイスプレジデントのエリック・ハンター(Eric Hunter)氏は次のように述べている。
「ジェネレーティブAI(生成AI)は、ほぼすべてのテクノロジ・プロバイダーのテクノロジとプロダクトのアジェンダに影響を及ぼしています。生成AIは、その成長戦略やプロダクト戦略から、従業員が日常的に使用するツールに至るまで、テクノロジ・プロバイダーのビジネスを再形成します。また、生成AI以外にも、企業の成長を阻む新たな摩擦、マーケティング/セールスにおける新たなアプローチ、顧客企業との新たな関係性など、テクノロジ/サービス・プロバイダーが知っておくべき重要な影響要因があります」
これらの課題の直接的、長期的な影響から、プロダクトリーダーは短期的な機会と長期的な優位性、景気回復や不況下における戦略のバランスを取る必要があるとのこと。Gartnerの2024年のテクノロジ・プロバイダーにおけるトップトレンドは、それらの相対関係を示しているという。
ハイテク企業における効率的な成長
過去10年間におけるIT支出の大幅な伸びは、ハイテク企業に恩恵をもたらした。その恩恵を享受するために、ハイテク企業はコストを十分に評価することなく成長を追求するようになったという。これは「費用がいくらかかっても成長する」戦略であり、ハイテク企業は、安定した成長が続くという仮説の上に、プロダクト、組織、雇用計画を立てたとしている。
しかし、マクロ経済情勢が、バイヤー(購買者)に不確実性をもたらし、資本コストの増大が投資家の焦点を利益成長へとシフトさせる中、ハイテク・プロバイダーは効率的成長を重視する傾向に変わってきていると同社のアナリストはみている。この効率的成長戦略は、現在の利益率と将来の収益機会を強化しながら成長することを重視しているという。
企業のIT部門とプロバイダーの新しい関係
ビジネスにおけるテクノロジの需要の高まりによって、企業のIT部門は多くの領域を、より深いレベル、より速いペースでカバーすることが求められているが、それによりIT部門のキャパシティとケイパビリティ要件と現状との間に大きなギャップが生じている。テクノロジ・プロバイダーのプロダクトリーダーは、IT部門だけでなくビジネス部門におけるプロバイダーとしての役割の拡大、ビジネス成果にフォーカスしたプロバイダーと企業の関係、企業全体の戦略的アライアンスなど、新たな関係と収益機会を創出する傾向にあるとしている。
サステナブル・ビジネスの拡大
サステナビリティ(持続可能性)への取り組みとESG(環境、社会、ガバナンス)による影響の管理においては、これまで内部リスクの軽減とコンプライアンスの確保に重点が置かれてきた。プロダクトリーダーは、サステナビリティ目標を達成するために、ダブル・マテリアリティの考え方と組織全体での先端技術の活用を取り入れて、進化する必要があるという。
AIの安全性
責任あるAIとAIの安全性は新しい概念ではないが、生成AIテクノロジの急速な発展は、コンテンツの出所やハルシネーションのような増大する問題への対処法を巡る議論に拍車をかけている。プロダクトリーダーは、モデルの透明性、トレーサビリティ、解釈可能性、説明可能性などのAIの安全性の原理原則を組み込んだソリューションを構築する必要があるとのこと。規制やコンプライアンスの問題に先んじて取り組むことは、生成AI市場で信頼を築き、競争力を維持するために重要だとしている。
購買者による悲観論の高まり
過去3年間にわたって、テクノロジ・プロバイダーは、時代遅れのGo-to-Market(以下、GTM)モデルが新しい購買者の行動と合わずに、営業成績に悪影響を及ぼすことが増えていることを見てきているという。この原因となっている購買者の悲観論を察知し、それに対応するためにセールス/マーケティングのアプローチを適応させなければ、テクノロジ・プロバイダーは、自社のGTM業務が社内外の観点からも衰退していくのを目の当たりにすることになるだろうと同社はみている。
業界特化型の生成AIモデル
汎用モデルは、幅広い生成AIアプリケーションで機能する一方で、ドメイン固有のデータを必要とする多くの企業ユースケースでは実用的でないケースもある。テクノロジ・プロバイダーは、利用可能なリソースを効率的に使用して、特定のユーザー要件に適合させることができる業界特化型のモデルを探求する必要があるとのこと。これを怠ると、モデルの活用においてコストと複雑さが増すことになるという。
パーソナライズされたマーケットプレース・エクスペリエンス
デジタル・マーケットプレースが専門的でニッチなニーズにも対応できるようになると、ソリューションの調達、導入、統合において購買者が向き合わなければならない複雑さが軽減される。そのようなパーソナライズされたデジタル・マーケットプレースを活用しないと、ターゲット顧客にとって見つけにくいサービスになってしまうという。同社は、2025年までに、サプライヤー/バイヤー間のB2Bセールス・インタラクションの80%がデジタルチャネルで行われるようになると予測している。
インダストリ・クラウドによる成長
サービス・プロバイダー、ハイパースケーラー、サードバーティの独立系ソフトウェア・ベンダー(ISV)、SaaSプロバイダーは、プロバイダーの成長を促進する顧客成果を実現するために、業界固有のソリューションに目を向けている。2027年までに、テクノロジ・プロバイダー企業の50%以上は、ビジネスイニシアティブを加速させるためにインダストリ・クラウド・プラットフォームを使用するようになると同社はみている(2023年は5%未満)。
プロダクト・レッド・グロース(PLG)と価値実現を融合させたハイブリッドGTM
プロダクト・レッド・グロース(以下、PLG)は、プロダクト・ユーザーに価値を示すことに重点を置き、GTMチームが見込み客の発見に利用できるシグナルを作成する。しかし、PLG GTM戦略を採用しているほとんどの企業は、多くの場合、100%セルフサーブ型のGTMアプローチは不十分であることに気づき始めている。案件をコンバージョンするには、どこかで売り手が関与する必要があるためだという。ビジネス価値と成果の正当化が求められているバイヤーのニーズにこたえるために、バリュー・マネジメントと実現に向けたイニシアティブとPLGを融合させたハイブリッドGTMが重要になるとしている。
高精度なマーケティング/セールス
生成AI、デジタル・コマース、メタバースなど、急速に進化するテクノロジの進歩は、テクノロジ・プロバイダーのマーケティング/セールス手法を変えつつある。新しい技術を活用した高精度のアプローチを採用できないテクノロジ・プロバイダーは、既存顧客内でのプレゼンスの低下や成長の鈍化により、全体的な取引の質が低下することが予想されるという。
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