OneERP+が目指す"経営プロジェクト"の全貌
富士通の業務の効率化・標準化の取り組みであるOneERP+プログラムでは、「リアルタイムマネジメント」「データの可視化」「グローバルスケールでのオペレーションの標準化」の3つの重点施策を掲げている。出井氏は、「各業務領域で、制度・システムやデータをグローバル且つグループ会社横断で統合していく。これはITの刷新プロジェクトではなく"経営プロジェクト"」と明言する。
出井氏は、富士通の現状の課題について言及した。「たとえば事業の予測、着地見込みを経営に報告するために、各部門のシステムからデータを抽出し、Excelで加工して各部門で議論するという"Excelのバケツリレー"が回っていました。各階層の恣意的な調整が入ることで、最新のシステムデータとの乖離が発生し、リードタイムは長くなり精度も低くなります」
同社はこうした課題を解決するために、リアルタイムで収集した標準化されたデータをデータレイクで一元化し、それを経営・事業の両面で活用することを目指す。「今ある情報から先に起こることを推察し、データアナリストが打ち手を提言していくマネジメントを実現したい。そのためには、オペレーションでは正確な源泉データを入力することが必須。集計業務から解放されることで、迅速かつ精度の高い経営判断も出来る」と出井氏は説明する。
4,000以上の個別最適化で肥大化したシステムをシンプル化
また、またオペレーションについては業務・ITともに地域・会社・機能毎にバラバラで、業務品質のバラツキがある現状から、業務プロセス・データとルールの標準化を図る。グローバルスケールでのシェアードサービスセンターなど、オペレーションの効率化・自動化を推進する体制を構築する。
「現在、富士通グループではグローバルで大小約4,000のシステムが稼働しています。この個別最適化で肥大化したシステムを最適配置にする、シンプルにしていくという取組みが必要です」と出井氏。
しかし、これだけのシステムが散在しているということは、マスタやデータの項目・粒度も千差万別だ。業務の標準化とシステム統合の必要だが、決してそれは容易ではない。そこで、ITシンプル化に向けての3つの基本方針を打ち立てた。
- 経営・業務においては、1つの業務はグローバルで1システムを使用する。
- アプリケーションは1システム、1シングルインスタンスで運用する。
- ITインフラはクラウドファーストを目指す。
「基本的にはFit to Standardで、SaaSを活用して標準業務・プロセスを作りあげていく。従来の個別業務のためのシステム化ではなく、いかに既存ソリューションに合わせて業務を行うかが重要です。そのために他社のプロセスや欧州の知見を参考にしながら、標準を作りあげるといった活動を推進します。現状の、各社・各ビジネス毎での独自ルールや業務プロセスを、今回作り上げた標準業務プロセスに合わせていく活動 ── "チェンマネ活動"を進めています」(出井氏)
OneERP+では、ERPはSAP S/4HANAで実現、周辺で各SaaSや既存システムと連携し、これらの情報をOne DATAと位置づけ、データレイクに集約した。
財務経理オペレーティングモデル(組織体制)については、「CoE(Center of Excellence)」「FP&A(Financial Planning & Analysis)」「SSC(シェアードサービスセンター)」の3つの機能をグローバルで一体となった組織体制として整備し、ガバナンス強化と業務最適化を図る計画だ。CoEでは「制度会計」「税務」「資金管理」などの領域ごとに体制を整備。FP&Aについては、2023年4月に経理や事業部門に散在していた計数管理担当者を集約して組織化したという。