百年アーキテクチャとSOA
大場氏によれば、オージス総研は大阪ガスのグループ企業のひとつではあるが、事業の半分以上は大阪ガスグループ以外のシステム構築および運用サービスとなっており、SIerとして幅広い業種へ向けたソリューションを長く手掛けているとのこと。また、SOAにエンタープライズOSSを活用する取り組みも行っており、製品ベンダーとは違った立ち位置にあるとしている。
オージス総研では、百年アーキテクチャというコンセプトも掲げており、これを実現する意味でもSOAの活用は重要だという。百年アーキテクチャがなにかを説明する前に、まず、IT部門が直面している問題についてから解説を始めた。
大場氏によれば、「企業がIT化を進めるにあたって、その段階は4つのステージに分けられる」という。ステージ1は、コンピュータを導入したものの活用していない「IT不良資産化企業群」。次に部門内の業務をITによって最適化している「部門内最適化企業群」。これがステージ2だ。ステージ3は、組織全体がITによって最適化されている「組織全体最適化企業群」だ。ステージ4になるとサプライチェーンを含めた共同体としてIT活用が進んだ「共同体最適化企業群」だ。
この分類の初出は、平成15年の経済産業省によるものだが、現在でもおそらく半数ぐらいの企業がステージ2の段階であると思われる。ステージ3でも3割前後ではないかと推測される。このことは、企業においてトップダウンのBPMやSOA展開が難しいという現実を示している。
また、同省の情報処理実態調査(平成18年)では、年間の情報処理関連の支出の内訳は、既存システムの維持管理におよそ60%のコストがかかっている。原因としては、サイロ型システムが乱立し、その連携が複雑かつ密になり、システムの抜本的もしくは戦略的な改修が起きにくくなっているとした。
この背景には、企業全体における業務とシステムの整理が不十分であるという問題がある。たとえば、システムの詳細機能に関する文書は存在しても、業務とシステムの大きな関連を示すドキュメントが整備されていないというケースが多い。そのため、現行システムの使われていない機能を発見することができず、システム改修時には、現行機能保証という名目で、不要機能を切り捨てることなく、機能追加のみが行われることになる。これによって、開発コストが増大し、肥大化したシステムは、さらにメンテナンスコストの増大も招くことになるという。
このような無駄を排除するためには、「ビジネスモデルや業務の進化に柔軟に対応できる持続可能なアーキテクチャを持つシステムを構築する必要がある」と大場氏は語る。これが百年アーキテクチャのコンセプトというわけだ。
大場氏は、ここでニューヨークにあるプラザホテルの事例を紹介した。この建物は1908年に建てられたものだが、1985年ドルの為替レート引き下げが合意された(プラザ合意)G5の舞台として有名な建造物である。名前のとおりこの建物はホテルとして営業していたが、現在では高級コンドミニアムとして機能しているという。時代の流れに耐える構造とニーズや環境の変化に合わせる柔軟性の好例ということだ。