BPMによる業務改革実現に向けてSOAの本質を理解せよ
「IT Initiative Day 2009 SOA Special」2011年回復のための改革視点 ~今、情報システム部門がなすべきことは何か~
ビジネス環境の変化に即応し、全体最適化を実現するシステム構築手法として、一時は過剰とも思えるほどの期待を集めたSOA。しかし、日本での成功事例は極めて少なく、一部ではその効果を疑問視する向きもある。果たしてSOAはITと業務の現場で求めれられている改革の課題に応えられるのか? 2009年10月16日にベルサール九段(東京)で開催した「IT Initiative Day 2009 SOA Special」(主催:翔泳社)のパネルディスカッションにて、ユーザー企業の情報システム部門およびソリューション提供ベンダー、システムインテグレータそれぞれの代表が意見を交わした。
- 清水敏正(モデレータ)
(株式会社NTTデータ シニア・スペシャリスト SOAエバンジェリスト) - 大関 洋(パネラー)
(日産自動車株式会社 グローバル情報システム本部 エンタープライズアーキテクチャー部) - 塩田 誠(パネラー)
(パナソニック株式会社 コーポレート情報システム社 BPM&SOA担当参事) - 尾花 学(パネラー)
(株式会社日立製作所 ソフトウェア事業部 AP基盤マーケティング部 部長) - 澤出 達郎(パネラー)
(日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 コンサルティングITスペシャリスト) - 大場 克哉(パネラー)
(株式会社オージス総研 技術部 SOAセンター センター長)

SOAは「手段」であって「目的」ではない

清水(以下、敬称略)
「そもそもSOA(Service Oriented Architecture)は必要なのか?」というのが最初のテーマです。これは単純にYesかNoかというよりも、さまざまなSOAの解釈がある中で本当に必要なものは何かという、SOAの捉え方の問題になるかと思います。実際にSOAを推進されているユーザー企業として、大関さんや塩田さんはどのようにお考えでしょうか?
(日産自動車株式会社
グローバル情報システム本部 エンタープライズアーキテクチャー部)

大関
日産自動車にとってSOAはもちろん必要ですが、最初からSOAありきで導入自体を目的とするような、いわば「SOAのためのSOA」は不要と考えています。自社のビジネスに必要な仕組みを考え、EA(Enterprise Architecture)などに取り組んでいく中で、結果的にSOAと呼ばれるようなシステムができあがっていく。これが本来の姿ではないでしょうか。この場合、SOAは目的を達成するための非常に有効な手段となり、本当の意味で効果を発揮できるのだと思います。
塩田
私も基本的に同じ考えですね。SOAはツールのお話というよりも思想だと考えております。我々が目指すべきなのは、ひと言でいえば「ビジネス指向のSOA」だと思います。ビジネスプロセス層に対する経営の社内外の変化に対し、柔軟かつスピーディに対応できるアーキテクチャー構築を目指すことになります。そのためには、実践的なEAを基盤として、ビジネスプロセス層、アプリケーション層、インフラ層に広くわたるSOA思想が重要となります。
そこで特に鍵となるのがビジネスプロセス管理、いわゆるBPM (Business Process Management)です。BPMはビジネス指向のSOA思想を具現化するためには、大前提であるといってもよいでしょう。さらに留意するべきなのは、BPMといっても、単にツールを導入してBPMN(Business Process Modeling Notation)でビジネスプロセスを描けばいいというものではありません。その前の段階での定量的な業務整理や分析、業務管理など、ノンITの部分がBPMの本来なのです。
清水
ベンダーの立場からは、いかがですか?

澤出
技術的な狭い意味でのSOA──サービス指向や疎結合といった要素に関しては、すでに必要かどうかを議論するフェーズは過ぎており、ソフトウェア工学的にも絶対必要なものと認識しています。そして、このディスカッションのテーマであるSOAは、BPMも含めた大きな意味でのビジネス改善と捉えていますが、もちろんそれはベンダーが提供する製品だけで実現できることではありません。ただ、ユーザー企業の方に変革に対するコミットメントがあるなら、それを加速することは我々にできると思っています。

尾花
お客様のビジネスというのは十人十色で、それらすべてにリーチできるSOA基盤を作ることはできません。それが我々ベンダー側にとって最大の課題でもあります。結局、ある種のリファレンス的な機能をまとめて製品という形で提供することになるわけですが、それを実際のビジネスにマッチさせるにはどうすればよいか常にユーザーに教えていただきながら一緒に考えていくことが大切だと考えています。
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- この記事の著者
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ITイニシアティブ編集部(ITイニシアティブヘンシュウブ)
経営・ビジネス・ITをつなぐ実践情報誌「IT Initiative」編集部
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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