AI insideは、京都府立医科大学との共同研究の成果として、眼表面希少疾患であるStevens-Johnson症候群の、数年後の眼表面所見の予後(経過の見通し)を予測するAIを開発した。
このAIを活用することで、発症頻度が少なく経験豊富な医師が限られる希少疾患において、医師とAIが協働し病状の早期発見や経過見通しができるようになるという。
両者は、2021年より眼表面希少疾患の診断を補助するAIシステムの共同研究に取り組んできた。今回、共同研究の成果として開発した眼表面予後予測AIは、患者の前眼部写真をもとに、指定難病であるStevens-Johnson症候群(SJS)および中毒性表皮壊死融解症(TEN)の眼所見が、数年後にどの程度進行しているかを予測できるとしている。
臨床現場への導入により、医師は眼表面希少疾患の診療経験の有無に依らず、AIの補助に基づく高い再現性のもと、医師とAIが協働して重症度判定や予後予測が可能に。今回検証に参加した医師グループでは、知見の深い医師と同程度の予測パフォーマンスを発揮することを実証できているという。
なお、この眼表面予後予測AIは、AI insideが提供するAIプラットフォーム上で、京都府立医科大学の研究チーム自らが開発したと述べている。
なお、同共同研究は医師の診断補助に直結する実用可能性が認められ、日本医療研究開発機構(AMED)の令和6年度「難治性疾患実用化研究事業」に採択されているという。また、共同研究に関する論文は、2024年4月25日付で専門医学雑誌『Allergy』にて公開されているという。
背景
眼表面希少疾患であるStevens-Johnson症候群(SJS)および中毒性表皮壊死融解症(TEN)は、口唇・口腔、眼、鼻などの粘膜にただれが生じ、全身の皮膚に発疹、水ぶくれ、ただれなどが多発する指定難病。眼病変が強い場合には、視力障害や失明につながる難治性瘢痕性角結膜疾患だという。
年間の発症頻度は人口100万人当たり2.5人ほどの希少疾患のため、知見豊富な医師が限られ、特に重篤な眼病変を伴う症例では、全国一律に十分な医療サービスを提供することが難しいという課題があるとしている。
また、発症後数年が経過した慢性期においても、眼病変が進行する患者がおり、眼病変の進行を適切に予測し、適切な治療を行うことが必要。しかし、希少疾患であるが故に、同疾患患者を診察した経験がない眼科医も珍しくなく、診療経験が治療に大きく影響してきたという。
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