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生成AIは「UI」を置き換えるのか?Snowflake SummitでStreamlit共同創業者に訊ねる

買収から約2年が経過、Streamlitの将来とは

 Python UIとして揺るぎない地位を確保しているStreamlit。2018年にGoogle Xに所属していた3人が、データプロジェクトを手軽に見せる方法として考案したことが始まりだ。Snowflakeが6月3日から米サンフランシスコで開催した年次イベント「Snowflake Summit 2024」で、共同創業者の1人であり、現在Snowflakeのプロダクトマネジメント担当ディレクターとしてAIの取り組みを統括するAdrien Treuille氏に、Streamlitの現在と将来について聞いた。

Snowflakeの買収から約2年が経過、共同創業者はどう振り返る

──2022年のStreamlit買収からこれまでを振り返ると、どのような2年間でしたか。

 StreamlitがSnowflakeに買収された直後、非常に興味深い出来事が起こりました──生成AIです。このようなブームが起きることは、完全に予想外でした。SnowflakeがStreamlitを買収した理由は簡単にUIを作ることができるからですが、Streamlitが機械学習や生成AIに向いている技術だったことは、Snowflakeにとっても幸運だったと言えるでしょう。

 実際、Streamlitはこの恩恵を多く受けています。生成AIは非常にパワフルで、新たなアプリケーションもたくさん登場していますが、当然ながらフロントエンドは必要です。そこで機械学習アプリやデータアプリ、ダッシュボードを簡単に構築できるStreamlitが必要とされ、ChatGPTのユースケースが爆発的に増加しました。Snowflake社内外問わず、Streamlitの利用数は驚くほど増えています。現在Streamlitの月間ビューは780万回に達しており、Streamlitのユーザーは買収前の8倍増えました。

 そうした状況を受け、私はSnowflakeで生成AIに取り組むことになりました。実は、生成AIブームよりも以前にAIの研究をしていた経験もあり、個人的にAIは過去100年、200年で最大の進歩の1つだと信じています。そうしたAIへの情熱とStreamlitを組み合わせることができるのが、今のSnowflakeでのポジションだと感じています。

 なお、Streamlitは引き続き、共同創業者のAmanda(Amanda Kelly氏)がCOOとして担当しており、私たちは毎日のように顔を合わせています。私はStreamlitの新機能をすべて把握しており、StreamlitチームもまたSnowflakeの生成AIに関する機能を把握した上で、コラボレーションを進めています。

──実際には、どのようなコラボレーションが生まれているのでしょうか。

 2023年にStreamlitはチャットアプリを作成できる、チャットコンポーネントをリリースしました。Streamlit史上最も成功した新機能で、これを利用した生成AIチャットアプリを至るところで見かけます。

Snowflake プロダクトマネジメント担当ディレクター Adrien Treuille氏
Snowflake プロダクトマネジメント担当ディレクター Adrien Treuille氏
Google XでStreamlitを創業し、Snowflakeに参画。その前は、カーネギーメロン大学で流行前からAIの研究をしていた。

 両者がうまく機能するためには、Snowflakeが提供するデータインフラと生成AIインフラ、StreamlitのUIとアプリケーションの連携が鍵となります。たとえば、Snowflakeは生成AIスタック「Cortex AI」や言語モデル「Arctic」など、機能追加を進めており、Streamlitとの連携はより広く、深くなっていると言えるでしょう。

 また、チャットアプリでの利用が多く見受けられますが、画像をアップロードして理解するような単純なインターフェースとしても用いられています。たとえば、Zoomは録画データを生成AIで分析していますが、そのフロントエンドにはStreamlitが使われています。

 もちろん、詳細な使われ方はわかりませんが、一般的に大量のデータがあるならば、感情分析や行動理解など、さまざまな分析が可能でしょう。つまり、(StreamlitとSnowflakeを用いることで)3年前には簡単にできなかったことを容易に実現可能です。

──では、Streamlitの人気の秘密はどこにあると見ていますか。

 Pythonは世界で最も使われているプログラミング言語であり、コンピュータサイエンスやプログラミングを学ぶほとんどの学生は、1年目にPythonを学習しています。また、機械学習でもよく使われており、現在普及してるモデルの多くでPythonが用いられていると言っても過言ではないでしょう。もちろん、SQLは大きなデータセットを扱う際に重要ですが、クエリの幅は広くありません。つまり、機械学習をはじめ、(データにかかわる)マニアックなことに取り組みたい場合にはPythonを選ぶことが多く、そうしたユーザーコミュニティにSteramlitは支持されています。

 そもそも機械学習はかなり特殊なエンジニアリングで、開発エンジニアも自分たちが作ったシステムが何をするのか、完璧に理解することができないという特性があります。もちろん、OpenAIのエンジニアもChatGPTが何をするのかを正確には知りえませんし、顔認証などに用いられる機械学習でも、光のあたり具合が精度にどのような影響を与えるのか完全に理解できません。

 このように、機械学習は“新しい”エンジニアリングであり、われわれが8年前にStreamlitを構築した理由はそこにあるのです。そして、生成AIでこのニーズが加速しています。

 実は、StreamlitはAI開発者だけでなく、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストにもよく知られています。スタートアップがStreamlitを使って技術のデモをしているからで、「今週、Streamlitアプリを50ぐらい見たよ」と言われたこともあります(笑)。

次のページ
Streamlitはどう進化する? 生成AIの台頭で「UI」は置き換えられる?

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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