“データ分析上手”の企業は同業他社に差をつける
ゴヤール氏に続いて、米IBMグローバルビジネスサービス上級副社長のフランク・カーン氏が登壇した。カーン氏は、「データ分析に投資するということは、ビジネスに計画性を持たせてリスクを回避すること」とし、従来のデータ統合やDWHの構築が重要であることにも増して、蓄積/収集されたデータをいかに活用できるかがこれからの企業経営のカギになるとした。
「IBMが実施したアンケートによると、ユーザーの3人に1人は信頼できない情報に基づいて意思決定をしており、さらに2人に1人が正しい情報にアクセスできていないことが分かった。リアルタイム性に欠け、また適切でないデータを基に経営戦略を立てることは非常に危険だ。
一方、同業他社よりも良い実績を上げている企業は総じてデータ分析がうまく、将来予測の確度も高いということが分かった」(カーン氏)。続けてカーン氏は、企業で実際にデータ分析者としてIBMのIOD製品を活用しているユーザーを壇上に招き、パネルディスカッションを行なった。
全米で5400万人の保険データを管理するビジネスインフォマティクスでは、DWH上の加入者データを使って医療制度の変更に合わせた保険のベンチマークを行ない、さまざまな可能性に対応しようとしている。担当者は、Cognosによるクエリ作成の自由度の高さを評価していた。
また、米国のファッションブランド、エリー・タハリでは、自社のDWHから150人のユーザーが1ヶ月に2万9000件のレポートを作っているが、リアルタイムでの在庫管理や納期管理が奏功し、物流コストを85%に削減した。
さらに、国際石油メジャーのシェブロンでは、同社の全ビジネスの上流から下流までのデータを資産として管理することに注力した。そのうえでデータの品質を高めて各種の予測分析を行ない、昨今の競争激化の中で設備投資戦略やサプライチェーン最適化に活かしているという。カーン氏は、ビジネスにおける正しいデータに基づく分析や予測の重要性もさることながら、そのための体制作りや投資の必要性についても強調した。
2009年6月、IBMは競合製品であるOracleとの互換機能(PL/SQLサポートなど)をウリにしたDB2 9.7を出荷し、日本国内でも注目を集めた。DB2の製品開発にも携わってきたIOD製品群の責任者である米IBMのアービン・クリシュナ氏に、対Oracleの戦略を語ってもらった。
OracleとDB2の競合関係は20年間続いてきたが、2年ほど前に私はこの状況を見直して、実際はDB2のほうが優れているのになぜ顧客が利用してくれないのかと考えた。1つの答えは、すでにOracleを使用している場合、当然だが移行が大変だということ。
そこで移行を容易にする仕組みを考え、現在のDB2 9.7に至った。出荷前に顧客にテストしてもらったところ、Oracleベースで99.5%カスタム化されたシステムであっても、DB2へのマイグレーションが可能であることが実証された。
顧客には、一度アプリケーションを作ってしまえば、どちらのDBでも使えると説明している。 そして、今年の11月からは新たに共有ディスク型のクラスタ機能である「DB2 pureScale」をオプションとして提供する。アプリケーションが増えていくと、DBには継続的な可用性が求められる。我々は、Oracle RACには可用性はあっても、継続性を持たせるにはかなりの設定作業を要すると見ている。
ここを1つの焦点にDB2 pureScaleで対抗していく。 また、次のバージョンでは、DB2によるSAPアプリケーションのサポート強化を予定している。さらに、ストレージコストの大幅な削減にも注力しており、このあたりもOracleからのマイグレーションの切り口にしていきたい。(談)