オープンマルチクラウドと「Oracle Database@AWS」
イベントを冠する「CloudWorld」は、元々は「OpenWorld」という名称だった。Oracle Databaseの“オープンさ”を表すもので、「Oracle Databaseは、さまざまなコンピューターで動いていました。IBMのメインフレームでもPCでも、多様なコンピューターの異なるOSの上で動いていたのです。Oracle Databaseを使い、多様なアプリケーションが実行されるなど、顧客にはさまざまな選択肢があったのです」とエリソン氏。
クラウドの時代には、さまざまなテクノロジーが各クラウドベンダーから提供されるようになった。ユーザーはいずれかのクラウドベンダーに決めて、そこから複数のサービスを購入して利用する……このような閉鎖されていた状況も変わりつつある。複数のクラウドを利用する「マルチクラウド」時代へと突入したからだ。
エリソン氏は、「複数のクラウドを自由に使えることが大きなトピックです」と言及。そして、「オープン・マルチクラウド」時代の幕は上がっており、大手のクラウドベンダー4社が揃っているとする。Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudに加えて、Oracle Cloudも肩を並べるとエリソン氏。クラウドアプリケーションにおいてもOracleだけでなく、SalesforceやWorkdayをはじめとした多くのサービスがある。
ユーザーは、クラウドベンダーの中から2つないしは3つを選定した上で、複数のクラウドアプリケーションを併用しているような状況だ。とはいえ、マルチクラウドでの相互運用がやりやすいわけではなく、連携しながらうまく機能させることは難しいと指摘する。
とある顧客では、Oracle Exadataのデータベースとアプリケーションをオンプレミスで運用しており、AWSへの移行を検討していたという。しかし、アプリケーションはAWSに移行できるが、ExadataはAWSでは動かない。そのため、ExadataをOracle Cloudに移行し、インターコネクトでAWSと連携させた。
しかし、インターコネクトがマルチクラウドにおける、最善の答えとは限らない。相互接続では、低レイテンシーの要求には応えられず、きちんと動かすためには設定やカスタマイズも必要だろう。「もっと良いアプローチとして何があるか。それはAWSの中にExadataを埋め込むことです。Oracleのクラウドデータセンターそのものを“AWS”に埋め込むわけです」とエリソン氏。
Exadataのハードウェア、ネットワーク、すべてのOracle Databaseのソフトウェア、これらをAWSのデータセンターに埋め込んでしまう。「こちらのほうが、ずっと良いパフォーマンスが出ます。そして、レイテンシーの問題もありません」ともエリソン氏は言う。
このような構成にすれば、サービスのプロビジョニングもしやすい。Oracle DatabaseをAWSのコンソールから触ることができ、慣れているAWSのユーザーにとって利便性は高いだろう。たとえば、アプリケーションサーバーでのOracle DatabaseのプロビジョニングもAWSコンソールから実行できる。「完璧に透明性があるのです。AWS上でOracle Databaseの最新機能も使えます」とエリソン氏。この「Oracle Database@AWS」は、北米でのプレビュー版が2024年末までに提供される予定だ。