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自社生成AIチャットリリースするも“反応なし”……危機感募らせたJAF廣野氏による「ディスラプション体験会」

「ガートナー デジタル・ワークプレース サミット2024」講演レポート


 ガートナー・ジャパンは、8月27日~28日の2日間、「ガートナー デジタル・ワークプレース サミット2024」を開催。このイベントのエグゼクティブ・ストーリーに登壇したのが一般社団法人日本自動車連盟(JAF)理事 DX推進本部 本部長の廣野芳紀氏だ。廣野氏は昨年もこのイベントに参加し、DXの取り組みを披露しており、今回はそれに続き、「シン・働き方改革 そこに”AI”はあるんか?」と題して講演を行った。JAFはどのようにAIを取り入れ、働き方を変えていこうとしているのか。廣野氏の講演を紹介する。

2000万人の会員を中心としたデジタル将来構想がベースに

 日本自動車連盟は、「JAF」の略称で故障した車をサポートするロードサービスを行っていることで知られている。

 「2024年7月末でJAF会員は2055万人を超えています。日本全国に1本部、8地方本部、52支部の活動拠点があり、約3,400人の職員が働いています。このうち3分の2が皆さんご存知のロードサービスに出勤するスタッフで、3分の1が事務職という構成です」

 今回、講演した廣野氏は、1983年にJAFの関西本部に入社し、40年間JAFで働き、現在は理事を務めている。

 「2019年にシステム部長を拝命し、システム部はその後、DX推進本部に改組し、現在に至っています。昨年のこのイベントでも、『メタバースに探る:働き方改革とDXを解き放つ!』というタイトルでお話しさせていただき、今後はメタバースとAIの両方を開発推進していくとお話ししました。1年が経ち、実際にAI開発がどうなったのかについてお話します」

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一般社団法人日本自動車連盟(JAF)理事 DX推進本部 本部長 廣野芳紀氏

 JAFでは2020年からDXに取り組み始めた。そのベースとなっているのがデジタル将来構想だ。

 「2030年には、会員を中心に様々なサービスをデジタル化し、そこから得られるデータを地方に集め、2000万人の皆さんの活動すべてを分析し、それぞれにカスタマイズしたサービスを提供していくことを目指した構想です。この実現には、JAF自身がデジタル化していく必要があり、経営層・組織・人・技術にトランスフォームをかけていく必要があります。しかし、それぞれ様々な課題と問題を抱えています。これらを同時に解決し、変革していく必要があると考えます」と積極的に変革を進める背景を語った。

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わずか3ヵ月で「JAF AI Chat」を内製 全国100人規模でPoC実施

 変革を実践するため、全国の職員からDXに取り組む人材を募集した。

 「本格的にDXに取り組む前年、2019年にDX人材を募集し、システム部員とのフュージョンチームを編成しました。このチームを利益推進チーム、様々な課題をデータで解決できないかを検討するデータマネジメントチームの2つに編成しました。2020年からは、全職員がIT、デジタル、データスキルリテラシー向上していくための教育プログラムを前記のDX人材に応募したメンバーに作ってもらっています」

 この教育プログラムは、2024年現在では「JAF ITアカデミー」となり、文科省が定める「P検定3級・2級」(大卒者標準スキル)認定レベルのITデジタルスキル、データ知識、リテラシー習得に該当する認定制度となっている。

 「認定制度を取得したスタッフは、ITデジタルデータ職員としてITデジタルスキル、データ知識、リテラシーを有し、自分の業務に活用できる職員を指します。現在、3,416人が認定資格者で、全員がITパスポートをとれる実力を持っています。2020年にはメタバース上に仮想大学を作り、JAFの職員だけでなく、50社の外部の方々も参加し、一緒に学ぶ体制としました。アカデミーの運営は、現場から来ているDXチーム、マネジメントチーム、合計14人が担当しています。メンバーは、最新の技術を学びながら、そのアウトプットとしてアカデミー内では先生役となり、認定する立場となります」

 この体制の大きな成果が、「JAF AI Chat」を内製したことだ。

 「GPT-4をエンジンにコンサルタントやベンダーの手を借りず、我々だけで開発しました。マイクロソフトのAzure OpenAI Serviceを活用して内製化することを決定し、着手したのは2023年7月。約3ヵ月で開発し、10月にパイロット版をリリースしました。内製化したことで、コストはAzure OpenAI Serviceの利用料だけで済みました」

 パイロット版は4ヵ月かけPoCを実施したという。本部内部監査本部ではコンテンツの適正性、有用性担保などを2ヵ月かけて検証した。

 それとは別に全国の職員100人を募り、役職者、一般職員混在メンバーに自由に利用してもらいながらテンプレート、ルール、ガイドライン提案などを模索。隔週に一度はメタバース内でワークショップも実施した。

 「通常、PoCはシステム部員がやるのですが、AIに関してはどのように使われるのか、どんな場面で使えるのか正直わからないところがありました。そこで全国から募集した100人に自由に使ってもらうことにしました。成果についてはメタバース内のワークショップで自由に討議してもらいました。DX推進チームのメンバーは、それを横で聞きながらルール、ガイドライン、ポリシー、CRMで利用するテンプレート作りを進めました。関わった100人のメンバーは、実際にAI活用が始まった際には“伝道師”となってくれるだろうとも期待しました。

 同時に、監査本部にもPoCをお願いしています。AIは間違った回答をする、不確実で実務になんて使えないという意見もあります。そこで業務に使って問題ないのか、監査本部にチェックしてもらうのが一番良いだろうと考えました。その結果、『業務に使える。アウトプットされるデータに問題はない』という評価をもらうことができました。一部修正を行って、2024年4月からJAF AI Chatの本番稼働がスタートしました」

次のページ
「ディスラプション」の原体験で生成AIに関心引き寄せる

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この記事の著者

三浦 優子(ミウラ ユウコ)

日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務。1990年、コンピュータ・ニュース社(現・BCN)に記者として勤務。2003年、同社を退社し、フリーランスライターに。IT系Web媒体等で取材、執筆活動を行なっている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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