新規事業のサイクル加速に向けた取り組み
ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化する中、企業の生き残りをかけた戦いにおいては、いかに顧客のニーズに素早く対応できるかが肝となる。しかし、環境の変化にともなってITシステムも複雑性を増しており、かえってビジネスを阻害する要因になっているケースも少なくない。
このような状況下、ソフトウェア開発を巡って「プラットフォーム・エンジニアリング」という考え方に注目が集まっている。これは、開発者から見たエクスペリエンスの最適化、加えて生産性を向上させるために開発環境を自動化する概念だ。
三菱UFJ銀行もこのプラットフォーム・エンジニアリングに積極的に取り組んでいる。同行の石田健三郎氏は「金融機関というと、どうしても古いシステムを使っているイメージがつきまとうものです。そのため、今年は『挑戦』と『スピード』をキーワードに掲げ、クラウド化をこれまで以上に進めています」と戦略を語る。
プラットフォーム・エンジニアリングを推し進めるにあたり、同行とタッグを組んでいる企業がJapan Digital Design(JDD)。もともと三菱UFJフィナンシャル・グループの内部組織であった「イノベーションラボ」がスピンアウトする形で、2017年に設立されている。JDDの木美雄太氏は、今回のクラウド共通基盤構築の目的について次のように話す。
「まず実現したかったことは、新規事業のリリース速度を高めること。加えて、リリース後に受けたフィードバックを基に試行錯誤するサイクルも早めたいと考えていました。実際、三菱UFJ銀行では2023年に相続に関する情報サイト『そうぞくガイド』を新たに発表するなど、新規事業に活発的に取り組んでおり、その多くの運用開発をJDDが担当しています。プラットフォーム・エンジニアリングによって、両者の取り組みを加速させられるのではないかと考えました」(木美氏)